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7.9 分泌物減少薬/喀痰溶解剤

7.9.0.1 痰の粘度は低くても高くてもダメ

気道分泌物を排出するもう一つの方法は、分泌物の性質を変えることで、咳や線毛運動による排出効率を高めることである。 分泌物の接着度と粘着性が、排出のしやすさを決める2つの大きな要因となる。

うすい分泌物は、より接着性が強く粘度が低い。こうした分泌物が気道の奥に入ると、ちょうど膜を張ったように気道をふさぐ。 このため、吸気時は肺内に空気が入るが、呼気時はこれらが弁のように働き、空気を呼出できなくなる。

一方、濃度の高い分泌物は、より粘度が高く、気道に栓をつくりやすい。

7.9.0.2 伝統的治療薬

7.9.0.2.1 吸入の効果は証明されなかった

水分や生理食塩水、あるいは重層水のようなものがエアゾールの形で供給され、これら分泌物の排出を助けるのに用いられてきた。

一般的な教科書には、加湿が痰の排出に役立つと教えているが、大きな規模のトライアルでもこれらの意義は証明できなかった。

喀痰の吸引は直接痰を取ることができるが、この方法は侵襲的で他の危険を伴う。

7.9.0.2.2 N-アセチルシステイン

喀痰のpHを変え、粘性を下げるN-アセチルシステイン7.1(NAC)のような物質もまた、 同様の目的で用いられてきた。

NACは、もっぱらCFの患者で用いられてきたが、これらは気道の狭窄や炎症を生じることがあるため、 だんだんと用いられなくなってきている。NACの効果は、犬の実験では明らかに痰の排出効率の増加をみているため、 エアゾルの形で用いることで、もっと使用されてもよい7.2と思われる。

7.9.0.3 喀痰溶解の新薬は、効果的だが高価

プルモザイムやDNaseは、DNAを溶解する酵素である。CFの患者では、痰の大部分がDNAより成っていることが分かっている。

1000人近いCFの患者を対象としたランダマイズドトライアルで、プルモザイムは安全で、肺機能をよくすることが証明された。 FDAではこの薬の対象を、CFの患者に限定している。 この薬は、1バイアル33ドルし、1年で1人あたり1200〜2400ドルかかるからである。

理論的には、どんな炎症であれ、喀痰中には死んだ白血球のDNAが多量に含まれているが、 その一方で、同じCFの患者でも、プルモザイムの効果が全く得られてない人もいる。

これらの理由は現在、DNA中のアクチンと薬との親和性によるものと分かってきており、 アクチンに対してより作用の強い薬も開発されつつある。

プルモザイムやその改良品の使用、更には、これらと他の機械的手法の併用は、今後盛んになっていくと思われる。


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admin 平成16年11月12日