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7.8 機械を使ったドレナージ

7.8.1 機械による咳

7.8.1.1 使い方を間違えると肺が吹き飛ぶ

機械により肺を膨らませる装置は、1951年にカフフレーターという名前で市販されたのが最初である。 これは、陽圧で肺を膨らませ、その後急に圧を抜くことで、咳と同じ効果を作り出すものであった。 この機械はポリオの患者に用いられたが、挿管とサクションが流行し出してからは用いられなくなってしまった。

その後、ジョン・バッハらが、この機械を再び世に紹介し、筋ジストロフィーの患者の咳を補助するために、 再び用いられるようになった。

図 7.7: 咳をさせる機械の例。左の子供に、空気を送り込む。

\includegraphics[width=.7\linewidth]{cough.eps}

この機械は有効であるが、肺気腫や気胸の既往のある患者では、注意して用いられるべきである。

7.8.2 フラッターバルブ

フラッターバルブは、PEEPの方法と振動による喀痰排出の方法を同時に行なおうとするものである。

これは太いパイプ(喫煙用の)の様な格好をしており、中に鉄の玉が入っている。

図 7.8: フラッターバルブの構造

\includegraphics[width=.5\linewidth]{flutt.eps}

患者が息を吐くと10〜25センチのPEEPがかかり、更に、15ヘルツの振動が肺に加わる。

図 7.9: 実際に使ってもらったところ

\includegraphics[width=.5\linewidth]{flutt2.eps}

理論的には、これでより効率良く痰が出るはずであるが、動物実験ではコントロールと大きな変化を見出せず、 嚢胞性線維症の患者8人に用いたスタディでも、PEEPマスクの使用との差を出せなかった。

しかしコンスタンらは、単なる肺理学療法のみと比べると、フラッターバルブはより多くの痰を出せたと報告している。 この機械の値段は109ドルである。

7.8.3 肺内パーカッション式呼吸器(IPV)

7.8.3.1 吸入する空気自体を振動させる

IPVはバードが1980年に考案した。この機械は1993年にFDAに認可され、以降用いられている。

図 7.10: 肺内パーカッション式呼吸器の実物。けっこう大掛かりな装置である。

\includegraphics[width=.4\linewidth]{percussion.eps}

この機械は、1分間に100〜225回の一瞬の圧力をマウスピース通じて加えることができ、更に、この間に多くの水分、 例えば20mlの水と0.5mlのエピネフリンを肺内に送り込むことができる。

バード社は生理食塩水に加えていくつかの薬を試したが、 $ \alpha $$ \beta $ の作用を併せ持つエピネフリンの使用が最も優れていたとしている。 この機械を用いることで、広い範囲の肺疾患で喀痰の排出を容易にすることができるといわれる。

嚢胞性線維症の患者を用いたスタディでは、彼らはこの治療によく耐えられたが、 得られた痰の量は体位ドレナージのそれを上回るものではなかったという結果が出ている。

この方法は研究者によれば、ドレナージやPEEPの効果の無い喘息や無気肺、また咳を出すことのできない 神経筋疾患の患者で効果があるということである。

PEEPマスクやフラッターバルブと違い、この機械は吸気-呼気全域にわたり振動を加えられる。 このことは、肺の血管床にも常に振動が伝わることになり、何らかの有利な作用を生じている可能性はある。

この機械の新しい型として、亀の甲のようなものを胸に着用し、1秒に15回の割合で陰圧をかけるものがある。 この効果はアメリカのスタディでは証明できなかったが、他の国のトライアルでは効果があったとされる。

7.8.4 高頻度胸郭圧迫

7.8.4.1 普通のバイブレーターとはちょっと違う

高頻度で胸に陽圧を加えることは、10年以上前より実験されてきた。一般にこれは、 ポンプにつながれたジャケットを患者に着用させ、高頻度で陽圧をかけることで行うことができる。 この方法は、その陽圧をかける力と頻度により効果が決まる。

近年のスタディでは、急性増悪したCFの患者が1日3回の体位ドレナージ、呼吸リハを受けるか、 高頻度胸部圧迫を受けるかで比較されている。50人を対象としたこの試験では、喀痰の量、肺機能とも両者で変化はなかった。

7.8.4.2 治療中も自由に行動可能

しかしながら、この方法についてはもっと多くの研究がなされるべきである。 この方法の大きなメリットは、ジャケットを着て治療を受けている間にも患者が他のことを自由にできる点にある。

またこの方法は老人などでも一人で行うことができ、行う場所を選ばない。


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admin 平成16年11月12日