P波とQRS波の間が0.2秒(=小さなめもり5つ分)以上あるもの。これ自体が問題となることは少ない。
P波とQRS波の間が一拍ごとに広くなり、ついにはQRS波が欠如する…を繰り返すもの。
しばしば見られるが、やはり無害である。遮断薬や、カルシウム拮抗薬を飲んでいる人にたまに出現し、
休薬でおさまることがある。
モニター上、QRSの幅が拡がって見える。
右脚ブロック、左脚前枝ブロック、左脚後枝ブロックがあり、さらに完全ブロックと不完全ブロックに分けられるが、 モニター(単一誘導)だけではどれだか分からない。
無症状なら放置してかまわないが、新しく出現した脚ブロックは心筋梗塞の可能性があり、要注意である。
P波を伴わない、幅広いQRS波が特徴。
基本的には、単一波形のPVCでカップリングインターバル(図)が一定の場合は、放置しても問題は生じない。
PVCの重症度分類というものがあり、覚えておくと何かと便利。
下の方、特に多形性のPVC(図)はVT、Vfに移行する危険が高い(図
)。
初回の場合、少なくとも3度以上(心疾患のある例では2度以上)は主治医に報告してください 6。
脈の2拍に1回または3拍に1回の割合で心室性期外収縮(VPC)を繰り返すもの(図)。
ジギタリス中毒などがなければ、通常のVPCと同じに考えてよい。
ただし、虚血性心疾患の後にこうなった際には、ハイリスクである可能性がある。
幅の狭い(正常と変わらない形の)QRS波が一つだけ他と不規則に出現する(図)。
その後はまた規則的なQRS波に戻る。P波は出るときとと出ないときがある。
心電図が横一線となった状態(図)である。心臓は、電気的にもポンプとしても活動していない。
実際に人が死ぬときは、ほとんどの場合は心室調律を生じてから心室細動となり、 そのまま何もしないと心停止に至る。末期癌の患者さんなどでは、この間2時間近く持つ人もいる。
臨床現場で問題になるのは、肺塞栓や重症出血性ショックなど、いきなり心停止を生じる場合である。
蘇生する場合は、発見と同時に心臓マッサージ開始、 呼吸の確認(呼吸が止まっていれば人工呼吸)、静脈ライン確保。
次に挿管・除細動の準備とボスミン、硫アトの用意。
この不整脈を起こしうる病気は以下のとおり7。
心電図上は何らかの脈拍があるのに、患者本人の脈拍が触れない状態。
普通は、心室調律の徐脈(図)になるため、迷わず心肺蘇生には入れるが、
ときどき完全に正常の心電図波形なのに、心拍を触れず、もちろん呼吸も止まっている症例がある。
この場合も、心臓マッサージを行うことをためらってはいけない。何が原因であれ、心機能がが回復するまでの間、 脳に血流を送ることが必要8だからである。
これを生じる病態は、以下のとおり。
蘇生の現場では、心マを行いながら心エコーを当て、血液ガスをとり、胸部単純写真などを見ながら上記の どれが原因なのかを考え9、それに対する治療を試みる。
心室性期外収縮が6個以上連発するものを心室頻拍といい、
30秒未満のものを非持続性VT、30秒以上のものを持続性VT(図)という。
この場合の対応は血行動態(つまり血圧や意識状態)、Vf既往の有無、 心拍数(RR間隔)などにより異なる10。
この間、患者の血圧が下がったり、意識が悪くなったらすぐにVfの治療に準じた治療12を行う。
心室頻拍が、細動に移行する(図)ことはよくある。
主治医がすぐに到着しない場合には、ただちに応援の医師を探す。
処置は医師が行うが、バイタルの確認、静脈ルート確保は基本。 余裕があれば薬剤や機器の準備(挿管セットと、DCとキシロカイン)が出来ればなおいい。
心電図が全く不規則な波形を示す状態。心室内の至るところが、勝手にに収縮しているが、 心臓全体のポンプ機能は0に近い。
多発外傷と並んで、救急外来の華 13。
Vfの主な治療の流れ14は以下のとおり。
WPW症候群に心房細動を合併すると心電図は通常の心房細動と異なり、
むしろ心室頻拍に近い波形(図)を示す(偽性心室頻拍という)。
血行動態的には心室頻拍に近く、心室細動に移行する可能性が高い15。
電気的除細動(同期100〜200J)を行うか、I I I 群 抗不整脈薬(アミサリンまたはリスモダンP 2A+生食20ml)を5〜10分かけてゆっくり静注する。
ジギタリスとワソランは禁忌。
普通の洞調律波型が、単に早くなる(図)。洞性頻拍なら放置してかまわないが、
モニターの心拍数変化のグラフを見なおして、いきなり頻脈になっていたら心房頻拍の可能性がある。
治療はけっこう厄介で、とりあえずの心拍のコントロールにはワソランや、インデラルを用いる。 発作を抑えるための治療薬にはI 群の抗不整脈薬を使うが、I a群よりI c群が効果があるときが多いという。
心房細動はP波が見えないこと、QRS波が不規則に出現することを特徴とする(図)。
病棟ではよく見られ、ほとんどは放置しても無害であるが、脈が速くなった場合には心不全になる可能性がある。
心房細動のすべてが治療対象になるわけではないが、 心拍数の速いものでは一回拍出量が低下するため、治療の対象となる。 16
心房細動を生じうる状態としては、脱水や発熱、心不全、痛みなどの交感神経が緊張する状態はすべて当てはまり、 特殊なものとしては甲状腺機能亢進症や高血糖などの、内分泌的なものがある。
脱水の補正や解熱、痛みの治療を行うだけで心房細動はコントロールがつく場合があり、 また心房細動を見た場合には、こうした疾患が隠れていないか注意する必要がある。
心房粗動の心電図(図)はP波の頻拍(250〜350/分)と、2:1または3:1のような房室ブロックを特徴とする。
心房細動と同様、心拍数が多い場合には治療対象となる。
幅の狭い(正常と同じ)QRS波が規則的に並び、ただただ心拍数が速い状態(図)。
P波はモニターでは見えないことが多いが、12誘導をとると、正常とは形の違うP波が 確認できる。
大きく、房室リエントリー性頻拍(AVRT)と房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)に分類される18が、 治療は同じ。
洞不全症候群は、正常の心電図波形のあとに、
いきなり波形の全く出ない状態が短時間続き、また正常の波形が出現するものをいう(図)
19。
3秒以上洞停止が続くものや、心拍数が50をきるものは治療対象となる。
症状が頻発したり、心不全を生じてくるなら永久ペースメーカーの適応である。
脈の遅い心房細動も、5秒以上の心停止がある場合や症状 20のある場合には治療対象となる。
徐脈のみで頻脈にならない場合は、薬物治療で逃げることもある。 特に痴呆の強い、高齢者などで家族が手術を渋る場合などである。こうしたときは、テオドールやプレタール、 カルグートなどを用いる21ことができる。
房室ブロックにはI 度からI I I 度までの分類があり、 さらにI I 度はWenckebach型とMobitz型に分けられるが、 治療の必要なのはMobitzI I 型とI I I 度ブロックである。
MobitzI I 型ブロックでは、正常の心電図波形に続いて、
いきなりQRS波が落ちる(図)。
I I I 度房室ブロックではP波とQRS波がばらばらに出現する
22(図)。
心室頻拍の一種であるが、高振幅と低振幅を交互に繰り返す特徴的な波形のパターンで、 心室細動に移行する頻度が高い。当然、こうなっている間は意識は無くなる。
図に実物を示すが、非常に特徴的な波形である。QT延長に合併する不整脈としても有名。
狭心症ではSTが下がる、心筋梗塞ではSTが上がる(図)というのが基本中の基本。
もちろん、誘導の位置や心筋梗塞の部位によっては心電図変化がこない可能性もあり、 診断には12誘導が必須である。
心筋梗塞や狭心症の既往がある例ではもちろん、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、心疾患家族歴など 25がある例は、特に注意。
代表的な、虚血によるST変化は図のとおりである。
狭心症や心筋梗塞の発作が疑われるたときの対処は以下のとおり
PVCだけで、胸痛を訴える人もいる。
胸膜炎や肺炎、心外膜炎でも胸痛を生じ、また心電図変化が生じるという報告もあるが、 12誘導が必要だし、マニアックなので割愛した。