4 胸水貯留

4.0.0.1 胸水貯留の原因

悪性腫瘍と心不全、感染がほとんど。

• 体重減少のある患者は、悪性腫瘍か結核のある可能性が高い。
• 胸水量が肺野の半分以上を占めているときは悪性腫瘍の可能性が高い。
• 胸水中のIFN-$\gamma$が正常(140pg/ml以下)の際は結核性胸水の可能性は薄い。

表 2: 胸水貯留の原因

漏出液
心不全	10-27%
肝硬変	3%
ネフローゼ	2%
浸出液
悪性腫瘍	30-48%
肺炎随伴胸水	11-17%
結核	15-20%
肺塞栓	3-6%
膵炎	0.3%
その他	5%

4.1 胸水の貯留する疾患

4.1.1 膿胸/肺炎随伴性胸水

• 肺炎に胸水を伴い、胸痛を合併する。
• 歯周囲疾患、口腔内の不衛生のある患者で発症頻度が高い。
• 嫌気性菌の関与が多い。
• 胸腔穿刺の適応は以下のとおり。どれかが当てはまったらドレナージ。
  • 膿性の胸水
  • グラム染色陽性
  • pH7.00以下
  • glu 40以下
  • LDH 1000以上

4.1.1.1 治療

• 抗生物質とドレナージが基本
• 第3世代セフェム系、カルバペネム系などの注射剤に加えてダラシンを併用³⁵する。
• 膿胸は胸腔内に隔壁を作り、チェストチューブだけではドレナージが行いにくい。このため外科に外科的なドレナージを依頼するか、血栓溶解剤を胸腔内に注入することが行われる。
• このときはストレプトキナーゼ25万単位またはウロキナーゼ10万単位を生食20-50mlに溶解し、胸腔内に注入して2時間クランプした後陰圧吸引を再開することを3日続ける。
• 胸水が胸Xp上減少したら成功だが、無理なら外科コンサルト。

4.1.2 結核性胸水

• 胸水貯留の原因が不明のときはかなりの確率で結核性胸水。
• 胸Xpは全く正常のこともある。
• 胸水培養は、ほとんどの場合陰性。
• 胸水中ADAの上昇も特異度は低いといわれる。
• 胸水中のIFN-$\gamma$は感度が高く、これが正常値であれば結核はまず否定的になる。
• 確定診断は胸膜生検。結核が原因の胸水患者の60%で肉芽腫を証明できる³⁶。

4.1.3 胸膜癒着術

• 癌性胸膜炎、胸膜中皮腫などで胸水のコントロールをはかるために行われる。
• 痛い治療なので、薬剤を胸腔に注入する前に1%キシロカインを20ml程胸腔内注入したり、NSAIDsを事前に内服してもらったりしてから治療を行う。
  • アドリアシン 1回20mg 胸腔内注入
  • ピシバニール 1回5-10KE 胸腔内注入
  • ドキシサイクリン 500mgを50mlの生食に溶解して注入
  • タルク 4-5gを50mlの生食に懸濁して注入

4.1.4 心不全

• P.参照
• 呼吸困難があり、胸水量が多い患者であれば穿刺したほうが症状が早く取れることもある。
• 通常は穿刺せずに心不全が改善するのを待つ。

4.1.5 ネフローゼ症候群

• P.参照
• 胸腔穿刺を行ってもすぐ再貯留してしまい、意味は薄い。
• 塩分制限3-5g/日の徹底と安静、利尿薬³⁷の投与を行う。

4.1.6 肝硬変

• P.参照
• アルブミンの補充と利尿薬を考慮する。

4.1.7 リウマチ随伴性胸水

• 関節リウマチ患者の5%に胸水を合併する。
• 胸水中の糖、pHは低下する。
• 原疾患の治療を開始しても、数週間は胸水は残存する。