ホームページに戻る
: 3 血液ガスの解釈
: 呼吸器疾患の鑑別
: 1 ゼーゼーする
目次
索引
2 息が苦しい
喘息と心不全が圧倒的に多い。
表 1:
呼吸困難を生じて外来に来る患者頻度
喘息 |
33% |
心不全 |
31% |
COPD |
9% |
不整脈 |
7% |
感染症 |
5% |
間質性肺炎 |
4% |
貧血 |
2% |
肺塞栓 |
2%以下 |
|
2.0.0.2 酸素濃度正常の呼吸困難
ケトアシドーシス、貧血、敗血症、気胸などの可能性がある。
- 酸素濃度が正常であっても、呼吸困難のある患者から酸素を取り上げてはいけない。
血液中の酸素濃度と呼吸困難感の程度とは全く相関しない。
- 気管内挿管をすることをためらってはいけない。救急の現場では、エレガントな治療よりも患者の安全優先である。
- 血液ガスを面倒がらずに必ずとる。致命的な病気の見逃しが少なくなる。
|
酸素投与を開始する
酸素飽和度がいくつであっても酸素を使う。
機械的に、マスク5l程度から。
|
|
|
血圧を測る
- 血圧が高い
心不全/高血圧性心疾患
- 血圧が低い
心タンポナーデ/緊張性気胸/肺塞栓
|
|
|
気管内挿管の適応を考える
- バイタルが不安定なとき
- 意識状態が悪いとき
- 気道が不安定なとき
|
|
|
血液ガスをとる
- アシドーシス
肺塞栓/DKA
- CO2貯留
COPD増悪/呼吸筋疲労
- 血ガス正常
気胸/貧血/敗血症初期
ルームエアーで採血する必要は無い。
|
|
|
聴診を行う
1。
- 呼吸の左右差
気胸
- 喘鳴の有無
喘息/肺水腫
|
- 1 病棟のうるさい中で分かるのは、
呼吸をしているのか、喘鳴があるのかぐらいなものである。
|
|
|
喘鳴の対処を行う
喘鳴があったら、すぐに以下のことを1行う。
- ソル・コーテフ200mg2静注
- ベネトリン0.5ml+生食5mlを吸入
|
- 1 胸部単純写真がすぐ撮れるなら、それを待ってからでも可。
- 2 南4ではサクシゾン200mg
|
|
|
胸部単純写真をとる
- CTRの拡大/胸水
心不全
- 肺動脈の拡張
肺塞栓/肺高血圧
- 肺血管影の消失
気胸
|
|
呼吸困難を伴う代謝性アシドーシスを見たら、以下の症状が無いかどうか考える。
いずれも致命的なものである。
- 血圧の低下
ショック状態の遷延
- 高血糖/PaO正常
糖尿病性ケトアシドーシス
- 体温上昇/悪寒
敗血症
- 突発する腹痛
腸間膜動脈塞栓症
- 低酸素血症/ショック
重症肺塞栓
胸水貯留、気胸などの呼吸器疾患、貧血や敗血症、ケトアシドーシスなどの全身疾患では、
血液ガスが正常であるにもかかわらず呼吸困難を生じ、また酸素投与が有効なことが多い。
SPO28が正常だからといって、
呼吸困難感を患者の心の問題、と決めつけてはいけない。
何か重篤な問題が生じかけているのは分かるが、原因がはっきりしない、
しかしバイタルの変化は致命的というほどでもない場合、
思い切って気管内挿管をしてしまうほうがよいと思う。
1回挿管してしまえば、それから1時間程度時間を作れる。その間に上級医を探し、必死になって原因を考える。
- P.参照
- 外来に来る呼吸困難の3割を占める。
- P.参照
- 気管支喘息とは、普段の喀痰の量や胸部単純写真で鑑別。
- 両者がオーバーラップしていることもしばしば見られる。
2.2.3 気胸
- 突然生じた呼吸困難と胸痛/咳で来院。
- 緊張性気胸でなければ重篤感は薄い。頻呼吸/頻脈を生じる。
- 胸Xpで確定診断できるが、小さな例ではCTが必要になることもある。
- 高齢者ではカリニ肺炎、COPD、肺腫瘍などの原因精査を。
- 肺野の15%以下の小さな気胸では脱気せずに経過観察。それ以上大きなものはチェストチューブ。。
- 治癒後は喫煙/予圧のない航空機搭乗/ダイビングを控えてもらう。
- 再発率は50%程度と高い。
2.2.4 間質性肺炎増悪
- 発熱と咳嗽、著明な息切れ、特に体動時の息切れとSpO2の低下を主訴に来院。
- 胸部単純写真上の著明な間質影、胸CT(とくにHRCT)の所見でほぼ確定診断が
得られる。
- 来院時のSpO2はたいてい80台。
- 血液生化学所見では、LDHとKL-6の上昇、ESRの上昇。
- 急性増悪で来院した患者に対しては、ステロイドパルス療法、エンドキサンの内服、
抗生物質投与(細菌感染が隠れているかどうかは診断のしようが無い)を行う。
- ステロイドは入院当日よりメチルプレドニゾロン1000mgを1日1回3日間投与、
以後4日目からは40mg/1X 程度の内服にする施設と、1000mg
500mg
200mgと漸減していく施設がある。
- 免疫抑制薬を併用する場合は、シクロフォスファミド91-2mg/kg/日の
内服を行う。
- 咳嗽の閾値が非常に低下しており、また咳に伴うSpO2の低下が著明。コデインやモルヒネなどの麻薬系鎮咳剤を早めに考慮。
- 低酸素血症は必ず合併するが、リザーバーマスク10lでもSpO2が90台ぎりぎりしかないことも
珍しくない。酸素投与以外にできることは安静と解熱、セデーションのみ。酸素濃度が保てない症例では気管内挿管の上人工換気を考慮するが、そうなった間質性肺炎の予後は極めて悪い。
2.2.5 肺塞栓
- 下肢の深部静脈血栓症(DVT)で形成された血栓が肺に飛んで生じる。
- 手術後の臥床後、初歩行で生じる例や、食指不振/脱水の患者、ICUに入室した患者、脳梗塞で入院した患者など動けない人に多発する。
- 以下の検査所見で診断
- 心電図上SIQI I ITI I Iパターン10、右側胸部誘導のT波の陰転化11。
- 心エコーでの肺高血圧。
- 胸CT上の肺動脈内の血栓12。
- 肺血流シンチでの血流欠損。
- D-dimer が低値であれば、肺塞栓の診断は否定的13になる。
診断がついた時点ですぐにヘパリンを開始する。
- まずはヘパリン5000-10000単位をボーラスで静注
- その後ヘパリン10000単位+生食90mlを5ml/h程度で開始
- 以後APTTで60-80秒を目標にヘパリンの量を調節
- 内服可能となった時点でワーファリンの併用開始
- ショックを伴う例、ヘパリンに対する反応が悪い例では血栓溶解療法
を考慮する。これらの薬物は、大量の肺塞栓のために血圧低下を起こした症例の
致命率を低下させ、その効果はヘパリン単独投与より高い。
- アクチバシン2400万単位を2時間程度で単回投与する14。
外来からきた肺塞栓患者は、凝固異常か悪性腫瘍の合併を生じていることが多い。落ち着いたら抗リン脂質抗体症候群の有無、上部/下部消化管内視鏡15、腫瘍マーカーの確認などを行っておく。
2.2.6 糖尿病性ケトアシドーシス
- 息切れ/嘔気/単に「調子が悪い」という主訴で来院、理学所見正常で帰宅
自宅で急変というパターンで入院するケースが非常に多い。
- 通常1型糖尿病の発症時やインスリン治療中断時に見られるが、2型糖尿病でも夏場の
ペットボトル症候群などより起こりうる.
- 血糖値は200-2000mg/dlであるが、通常は600mg/dl程度のことが多い.動脈血pHが6.8-7.3、ケトン体が陽性。
- 非ケトン性昏睡では動脈血pH7.30であり、血糖は極端に高く1000mg/dl程度となり、血漿浸透圧は360mOsm/l程度になる。
基本は輸液とインスリン(p.参照)。
- 輸液
- 治療開始時は生理食塩水を用い、1000ml/時間で2000-3000ml点滴
- その後24時間で 4000-6000mlを目安に補液を行う
- 血糖が低下したら、1/2生食あるいは維持液に輸液を変更
- インスリン
- 診断と同時にレギュラーインスリンを10単位静注
- その後0.1U/kg/h のペースで持続静注16開始
- 血糖値が250mg/dlをきったら、静注スピードを1-2U/hに減量
- インスリンの静注は血液ガス上アニオンギャップが正常化するまで1U /h以下には下げない
- 血糖値が下がってきたらグルコースとカリウムを補いつつインスリンを継続する
- メイロン投与について
- アシドーシスに対してメイロンを投与する是非には議論があるが、
pHが7.0以下の時には用いたほうが症状が早く取れる。
- pHが7.2以上あるならばメイロンの投与は必要ない。
- メイロン投与の標準量は、以下のとおり
この式で求めた投与量の半分を補正し、残りはデータを見ながら補正していく。
2.2.7 心不全
- 急性期の治療についてはP.参照。
- 呼吸困難を訴える患者で心不全/虚血性心疾患の既往がある。
- 胸部単純写真で肺うっ血、胸水を証明。
- 血清BNPが高値17。
- エコー上心臓の動きが正常であっても"心不全"である可能性は否定できない18。
- 原因がなんであろうがACE阻害薬、利尿薬19、アルダクトン12.5-25mgの内服を開始すればたいていの心不全症状は取れる。
- Kの上昇、BUN/CREの上昇が問題になることがあり、このときはアルダクトンを減量するか中止する。
- 心不全の初期の症状が安定したら遮断薬を少量から開始するが、循環器の医者に任せたほうが無難。
2.2.8 敗血症
- 呼吸困難/悪寒戦慄を訴える敗血症は緊急の対処を要する。
- 特に高齢者の尿路感染に多い。
- 症状は急速に進行する。15分ぐらいの経過でいきなり悪寒戦慄を訴え、ショック状態になったりする。
- 高齢者の場合、のんびり原因を調べている暇はないので、悪寒/戦慄/発熱を訴える高齢者を見たらすぐに対処20する。
- 血液培養1セット採取21
- ソルコーテフ/サクシゾンを100mg静注
- ロセフィン1g+生食100mlを点滴静注
- その後原因精査を行う
- 摘脾後の患者の肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌敗血症22、IVH使用中の患者のブドウ球菌、腸球菌23、カンジダ敗血症に注意。
- 好中球減少の患者の場合はいきなり緑膿菌敗血症になる可能性もある。このときは抗緑膿菌ペニシリンに加えてアミノグリコシドの併用24を行う。
- P.参照。
- 急性発症の呼吸困難の原因としては少ない。
- p.参照。
- スパイロメトリーで吸気/呼気の最大流速が低下。
- 慢性的なCO2の貯留がある。
- しばしば診断困難な呼吸困難感として来院するので注意。
ホームページに戻る
: 3 血液ガスの解釈
: 呼吸器疾患の鑑別
: 1 ゼーゼーする
目次
索引
admin
平成16年8月5日