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2.17 不隠

特に既往のなかった64歳の男性が、肺炎にて入院。ロセフィンの投与を受けている。 今までは不穏などなかったが、この当直帯に入ってから急に怒りだし、暴れているという。 息は荒いが、会話は可能。苦しくないですか、ときいても、"うるせえ""どっか行けこの馬鹿"としか言わない。 話にならないので、押さえつけて"大丈夫ですからね〜"などといいつつ、セルシンの静注を行ったが、おとなしくなると同時に 徐脈になり、心停止になった。すぐに気管内挿管を施行。

胸部単純写真を撮ったところ、肺炎が悪化しており、重篤な低酸素血症を生じていた。幸い心拍は再開し、治療も奏効。



娘は"安定剤を静注して心停止になった"と聞いて随分怒ってたが、自分の父親が"うるせえ""どっか行けこの馬鹿" といっていた、という記載を見て、かなりショックを受けたらしい。以後は穏やかになった。

こちらが"何とかしようと思ったんです2.20が、話にならなくて…" と切り出すと、"父には何も伝えないでください"ということで、丸く収まった。

2.17.1 鑑別診断

高齢者の不隠は、意識障害に準じた鑑別診断が必要になってくる。

具体的には

バイタル、血液ガス、血糖値をまず確認し、上記疾患が無いことを確認して初めて不隠の治療を考える。 特に、今まで不隠の無かった人が急に不隠になった際には注意。

痴呆の強い高齢者の不隠に対して鎮静薬を用いることは、決して間違いではないと思う。 しかし、最近のマスコミ報道の影響か、不用意に鎮静薬を処方していることが家族に知れると大騒ぎになることがある。

現在は、鎮静薬を用いる際には夜中であっても家族の同意を得、またトラブルになりそうな家族の場合は 患者を速やかに個室に移し、夜通しついてもらうことにしている。

完全看護の建前では家族の付き添いは不要になっているが、医療従事者を全く信用しない家族の場合、 仕方がないと思う。「我々の病院の実力ではご家族の希望する医療レベルを満たせないので、 申し訳ないのですが付き添っていてください。」と、転院も辞さない構えでお願いすると効果的。 まず5日もすれば、家族も鎮静の必要を体で理解してくれるだろう。


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admin 平成16年11月12日