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: 2.15 腹痛 : 2. 症状別の対処法 : 2.13 頭が痛い   目次


2.14 胸が苦しい

62歳の女性。以前より散歩をすると30分ぐらいで胸が苦しくなることがあったという。

ここ1ヶ月ほど、胸痛を自覚せずに歩ける距離が短くなったということで外来初診。今は症状はない。

この人に、外来でダブルマスター負荷を行ったところ、生理検査室で胸痛が止まらなくなり、意識が消失。 全館ドクター招集の大騒ぎになってしまった。



すぐにCPRと緊急PTCAが、合併症なく行われ、無事退院。患者さんとその家族には、"危ないところでしたねー" "運がよかったですよねー"で押し通し、家族も喜んでいた。

Vfを引き起こしたのは自分だということは、当然黙っていた。

2.14.1 胸痛の鑑別

診察上、最も大切なものは問診である。

まず大きく次の2種類に分類する。

2.14.2 持続性胸痛の診断手順

  1. 診察までにバイタルをチェックし、さらに心電図もとってもらっておく。
  2. もしショック状態ならば、すぐに上級医をコールする。そしてライン確保、02投与などショックの治療を行う。
  3. そして、まずは心エコー、胸部単純写真、心電図をオーダーし2.15、次の疾患を鑑別する。

  4. 具体的には呼吸音の左右差の確認、静脈怒張の有無を見、その頃にはポータブル検査の技師さんたちが集まり始めているはず。後は、自分に全く知識が無くても、彼らが診断してくれる2.16

  5. ショック状態でなければ、次に解離性大動脈瘤を除外診断する。これも、病歴と単純写真所見、あるいは血液検査 2.17などから推定可能である。疑わしければCTを撮ることで、確定診断可能。

除外できたら、少し安心して気胸、肺塞栓、心膜炎、胸膜炎、肺炎がないかどうか考える。

2.14.2.1 不安定狭心症は運動負荷禁忌

以下の症状は、循環器コールの絶対適応である。

この3つは、不安定狭心症である。診たときの胸痛が無く、心電図が正常でも心カテの適応になる。 マスター心電図のような、運動負荷検査は禁忌である

2.14.3 専門家が来るまでの治療

心筋梗塞や解離性大動脈瘤であった場合、やることは上級医が来るまでのサポーティブケアが中心となる。

  1. 何をおいても、酸素はつけておく(カヌラ3l程度)
  2. ラインをキープ。1号液や、ラクテックでかまわない。
  3. 診断が確定した場合、塩モヒの皮下注射を積極的に行い、胸痛を止める。
  4. 血圧が高い場合は速やかに降圧。目標は動脈瘤なら120台、心筋梗塞なら140台。静注の降圧薬を用いる。ニトロール静注が使いやすいと思う。
  5. 心電図モニターは必ずつける。

病院によってまちまちであるが、緊急PTCAになる可能性がある患者の場合、バルーンによる治療に加えて ステントが入ることが多くなっている。このため、PTCA前に小児用バファリン、プレタール2.18の内服を行ってもらうことも多い。


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admin 平成16年11月12日