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: 2.9 脈が早い : 2. 症状別の対処法 : 2.7 血圧が高い   目次


2.8 ショック状態

COPDの増悪にて入院。ICUで気管内挿管中。回復傾向であり、翌日抜管を計画していた矢先、 急に血圧が50台に低下したということでコールがあった。

輸液にも、カテコラミンにも反応がなく、心エコーと胸部単純写真をオーダーする間にも血圧は低下、徐脈になった。

チームの下級生が聴診し、"緊張性気胸じゃないですか"と指摘したら、果たしてそのとおり。チェストチューブを挿入したら 何事も無かったかのように落ち着いた。



自分の聴診技術に自身が無かったので、下級生にも"聴診所見なんて、今は意味は薄いんだよ" などと教えられていた矢先の出来事だった。

下級生の機転に助けられたが、自分の自尊心はかなり傷ついた。

2.8.1 基本的な治療方針

まずはその患者さんにおいて、低血圧が問題となっているのか、元から低いのかを評価する。

血圧が低いことが問題となっている患者さんを診た場合、まずは末梢ラインから生食、あるいはラクテックを全開で落とす。半分ほどが入っても血圧、あるいは症状の回復がない場合は、

を開始する。これで時間を稼ぎ、この間にショックの原因を考える。

2.8.2 血圧低下の鑑別疾患

これだけは、最低限考えるように。上3つは1時間ぐらいでだんだんと血圧が下がり、下3つはいきなりショックになる。

病歴から、さっきまで元気だった人が突然ショックになったのか、もともと生きが悪い人が血圧低下を生じたのかをまず確認。

検査としては、組織の灌流傷害の程度を評価するために、血液ガス(アシドーシスを見る)は必須。 できれば心エコー2.8も早期に行いたい。

鑑別診断を行うためにはさらに、胸部単純写真や心電図などを評価。出血性ショックが疑われるなら、胃洗浄、直腸診も。 採血も、敗血症のルールアウトには役に立つ。出血やAAAを疑うなら、腹部エコーとCTを考慮。

ERでショックの患者さんを診た場合、ショックの回復がない状態でERを出てはいけない2.9。 検査手技でショックが直ることはないので、CTを施行するとき以外は、外に患者さんを出さないように2.10

2.8.2.1 気管内挿管中の患者さんの血圧低下

特に気管内挿管中の患者においては会話が出来ないため、鑑別診断は困難である。

こうした患者においては

を考え、ワークアップすること。血圧低下が来たら、すぐに胸部単純写真をオーダーする。教科書的には、聴診上緊張性気胸が疑われたら、迷わず前胸部にエラスター針を刺すよう教えている。

実際に、"迷わずに"それが出来るレジデントがいたら、是非会ってみたいものだ。自分には、その勇気は無い。

2.8.2.2 昇圧薬

以下の3つだけで良い。


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admin 平成16年11月12日