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2.4 息が苦しい

初診の60歳の女性。10日前からひどい下痢が続き、嘔吐も頻回にあるということで来院。

本日になり呼吸が苦しくなり、動悸もひどくなったという。 SpO2 97。バイタルは安定しているが、呼吸数は30回と上昇。胸部写真も正常。

"高齢者の過換気か?"などとカルテに書いて帰してしまったが、2日後に救急搬送。結局、ケトアシドーシスで初発した糖尿病だった。



入院中に謝り倒したせいか、トラブルにはならなかった。 もしこのとき、患者が入院希望で断っていたら、トラブルを生じていたかもしれない。

以後、入院希望症例は全例採血してから判断している。上司からは"馬鹿"といわれているが、 以降は同じ落とし穴にはハマっていない。

2.4.1 呼吸困難感の鑑別疾患

2.4.1.1 血液中の酸素飽和度と、呼吸困難感とは一致しない

呼吸困難感は、PaO2が低下した場合か、肺胞の拡がり方と胸郭筋の仕事量の乖離を生じた場合、 アシドーシスが進行した場合に認識されるといわれている。

SPO2が正常だからといって、呼吸困難感を患者の心の問題と決めつけてはいけない。 "データは正常だから、大丈夫です!"などと患者を叱ってしまい、後からトラブルになるケースは多い。

2.4.2 ワークアップの方法

  1. 酸素飽和度がいくつであっても、まずは酸素投与を開始する。
  2. バイタルが不安定であったり、重篤感のやけに強い場合には、とにかく人を集めておく。挿管になる可能性もある。
  3. パルスオキシメーターだけではなく、必ず血液ガスを取る。あえてルームエアーで採血する必要はまったく無い。
  4. 気胸と無気肺を念頭に置きながら、聴診。左右差が無いかどうか、喘鳴が無いかどうか。
  5. 胸部単純写真をポータブルでオーダー。これで気胸と無気肺、胸水は分かる。
  6. 患者が発熱していたり、原因の明らかな痛みを訴えていた場合にはすぐにそれを取り除く2.5
  7. 採血は、急性期の診断にはあまり役に立たない。患者に発熱があったり、写真で異常な陰影があった場合は参考になるが。

とにかく、低酸素血症を見逃すことが一番怖いので、原因がはっきりするまでは酸素ははずさないこと。 呼吸困難の原因がはっきりするか、症状が落ち着くまでは、ベッドサイドを離れてはいけない。

入院中の患者であれば、"原因のはっきりしない呼吸苦"ということで、ICUにおろし2.6てしまえば、当直医は安眠できる。

原因のはっきりしない呼吸困難では、以下のような落とし穴に注意。


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admin 平成16年11月12日