初診の60歳の女性。10日前からひどい下痢が続き、嘔吐も頻回にあるということで来院。
本日になり呼吸が苦しくなり、動悸もひどくなったという。 SpO2 97。バイタルは安定しているが、呼吸数は30回と上昇。胸部写真も正常。
"高齢者の過換気か?"などとカルテに書いて帰してしまったが、2日後に救急搬送。結局、ケトアシドーシスで初発した糖尿病だった。
入院中に謝り倒したせいか、トラブルにはならなかった。 もしこのとき、患者が入院希望で断っていたら、トラブルを生じていたかもしれない。
以後、入院希望症例は全例採血してから判断している。上司からは"馬鹿"といわれているが、 以降は同じ落とし穴にはハマっていない。
呼吸困難感は、PaO2が低下した場合か、肺胞の拡がり方と胸郭筋の仕事量の乖離を生じた場合、 アシドーシスが進行した場合に認識されるといわれている。
SPO2が正常だからといって、呼吸困難感を患者の心の問題と決めつけてはいけない。 "データは正常だから、大丈夫です!"などと患者を叱ってしまい、後からトラブルになるケースは多い。
とにかく、低酸素血症を見逃すことが一番怖いので、原因がはっきりするまでは酸素ははずさないこと。 呼吸困難の原因がはっきりするか、症状が落ち着くまでは、ベッドサイドを離れてはいけない。
入院中の患者であれば、"原因のはっきりしない呼吸苦"ということで、ICUにおろし2.6てしまえば、当直医は安眠できる。
原因のはっきりしない呼吸困難では、以下のような落とし穴に注意。