68才男性。
以前からの脳梗塞にて誤嚥がひどく、さらに洞不全症候群もあったためペースメーカーを挿入。 手術後3日目であったが、疼痛もなく落ち着いていた。
本日になり、日中は37℃台の発熱。上級レジデントは1日中カテに入っており、 報告できずに様子を見ていたが、夕方になると熱は上昇し、 意識もおかしくなってきた。慌ててワークアップを始めたが、すでにスタッフは全員帰宅後。
明らかな熱源は無い、という判断で抗生剤を使用せずに経過観察。 翌朝にはショック状態となっており、ペースメーカー感染が否定しきれなかったため、抜去を余儀なくされた。
後から、"どうして呼ばなかった!"と件のレジデントから、大目玉を食った。"あんたが不必要に怖いからだろ" といいたかったが、黙っていた。
特に高齢者の場合、発熱の原因のほとんどは誤嚥を含む肺炎、尿路感染症、ライン感染と考えて良い2.2。
熱源の精査といいながら、我々が実際に行っているのは抗生剤を使用する口実さがしである。
解熱薬代わりに抗生剤を使っても上級医から"バカ"といわれるだけですむが、抗生剤を使わずに 患者の敗血症を見逃したら、自分の人生を失うのが現在の日本である。
患者が発熱しているとコールがあった場合、典型的な上気道炎の症状を呈しているので無い限り、 "ウイルス性の風邪"ということで様子を見ることはまずない。当直帯でこれをやるなら、 最低限、解熱剤を飲ませてから8時間後ぐらいに、もう一度回診すべきだ。
当直医の睡眠時間のためにも、翌朝の主治医を慌てさせないためにも、"人間関係の潤滑剤"として、抗生剤は使ったほうが角が立たない。社会的な適応で抗生剤を用いるのは、いかにも愚かしいが仕方が無い。
一通りのワークアップがすんでから。もっとも、ナースに呼ばれてから30分以内に、すべての手技が終了しているのが前提。
抗生剤の選択は、一人ではやらないように。
異論は非常に多いと思うが、入院患者では、うちのチームではほとんどの場合、以下の抗生剤しか使っていない。
いかにも馬鹿丸出しの処方かもしれないが、欧米のガイドラインでも、だんだんこうした処方をリコメンドしつつある。多分、学問的な要因よりも、訴訟の圧力が働いたのだろう。
今は、サンフォードガイドライン2.4の和訳もすぐに出版されるようになった。これにしたがっているかぎりは、常に世界標準の抗生物質治療が出来る。
発熱患者で見逃しやすいのは、なんといっても感染性心内膜炎と髄膜炎である。例えば、以下のような形で 見逃される。