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: 2.3 発熱
: 2. 症状別の対処法
: 2.1 研修医のABC
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74歳女性。小腸閉塞にてIVH中であったが、不穏のため夕方自己抜去している。
当直帯に入り、様子がおかしく、呼びかけても反応がないということでコールがあった。
バイタルは正常。呼吸もしているが、反応はないという。すぐにCTスキャンをオーダーしたが、異常はなく、
病棟に帰ってから採血をオーダーしたが、結果が帰って来るまでの間も意識障害は遷延した。
40分後の採血では、血糖値23。幸い、障害は残らなかったので家族には報告せず、問題にはならなかった。
実は、ナースサイドでは低血糖の可能性を考えていたが、その研修医に夕方怒られたばかりで、言い出せなかったという。
以後、意識障害の患者には、医師の相談なしで、血糖とSpO2の測定が行われるようになった。
- 見逃すと危険なもの
- 30分程度なら遅れても良いもの
- 高血糖、尿毒症、肝性脳症、高体温
- てんかん発作、重症不整脈の回復後
- 脳出血、脳梗塞
いわゆるAIUEOTIPSの鑑別診断
- A:アルコール
- I:糖尿病性昏睡、低血糖
- U:尿毒症
- E:脳症、てんかん2.1
- O:鎮静剤中毒
- T:外傷性の意識障害
- I:感染症。髄膜炎、脳炎など。
- P:精神疾患によるもの。
- S:失神発作
大事なのはその人が"意識障害である"と認識できるかどうか。
甲状腺機能低下症(CKの上昇と高脂血症)と副腎不全(低Na,高K,低血糖)も、頭において検査データを見ること。
- バイタルが安定しているかどうか、特に呼吸があるかどうか確認
- 血液ガスを取り、低酸素があったら酸素開始
- 血ガスをとった血液で、血糖も一緒に測る
- これらがすべて正常であった場合は、KN1Aでラインキープ、採血(肝機能と電解質、腎機能、アンモニア)
- 心電図モニターをつけ、頭蓋内疾患を疑うようならCTをオーダー
- 必ずプロテクターを着け、患者さんと一緒に入る。
もちろん、病歴から原因が明らかなら、これに従う必要は無い。
検査所見がすべて正常で、しかも意識障害が戻らなかった場合は、ラインと気道、心電図モニターを確保した上で様子を見る。
精神疾患やてんかん発作の既往が無ければ、次に行うのは腰椎穿刺であろう。
血ガス上低酸素血症があったらすぐに、また血糖値が正常であった場合は、
採血をオーダーしたらすぐに上級生をコール。基本的には、意識障害になった患者は、下級生の手におえるものではない。
- バイタル、血液ガス、血糖チェックを行わずにCTを施行、結局原因は低血糖で、不可逆的な脳障害が残った。
- 精神科疾患の既往がある患者が錯乱。ハロペリドール静注で様子を見るとおとなしくなったが、翌日の検査データでNa 116と低下していた。
- 骨転移を生じているがん患者が意識障害。家族を呼んで"もうだめです"と話をしたところ、高Ca血症であった。
- 右の片麻痺に意識障害を合併して来院。"絶対脳出血だ"との確信でCT施行。結局低血糖発作だった。
- 意識障害の患者が来院。血圧が80台であったが、まずはCTを施行。CT上は何もなかったが、CT室からの帰りの廊下で呼吸停止。結局敗血症性ショックで患者は死亡した。
COPDのように、肺機能異常がある場合を除けば、短期間の気管内挿管は合併症を起こしにくい。
原因のはっきりしない、遷延する意識障害の患者は、気道の保護を行う意味でも挿管の閾値は低くなる。
気管内挿管自体は、意識障害の治療に本質的なものではないが、何もしないよりは患者の家族の満足度は高い。
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admin
平成16年11月12日