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: 7.8 機械を使ったドレナージ : 7. 非侵襲的な気道分泌物の管理 : 7.6 介助による方法   目次


7.7 終末呼気陽圧

PEEPは当初デンマークで開発され、効果的な方法として世界中に広まった。

この方法により、体位ドレナージが滅多に行なわれなくなったところもある。

患者は当初、PEEPを造り出すマスクをつけて5〜20回呼吸する。この間呼気中は、気道内は陽圧になる。 患者が呼吸中にはその圧力はモニターされるが、15〜30cmH2Oの低い圧を用いる方法と、 60〜80cmH2Oの高いPEEP圧を用いる方法とがある。

この間の呼吸は、吸気と呼気の時間の比にして1:3から1:4とする。この状態で5〜20回呼吸した後、 患者にハフィングをしてもらう。これを1サイクルとして、患者の痰が取れるまで行なう。通常20分以内に終わる。

PEEPをかける方法は、デンマークではマスクが好んで用いられるが、アメリカではマウスピースが良く用いられる。

図 7.5: PEEPバルブを用いた肺理学療法

\includegraphics[width=.5\linewidth]{peepvalve.eps}

この方法の原理は、PEEPのかかった呼吸中には肺の側副呼吸通路を空気が通るために潰れた肺胞を押し開き、 気道分泌物を押し出し、更に続くハフィングでそれらを喀出すると説明される。

図 7.6: PEEPの効果で異物が押し出されている

\includegraphics[width=.6\linewidth]{sokufuku.eps}
アンダーソンらはこれらの現象が本当に生じていることを証明し、酸素化が促進されることを報告している。

PEEPに関してはいくつもの研究がなされているが、初期は手術後の無気肺の予防の効果を論じたものが多かったのに対し、 近年では嚢胞性線維症の患者についての報告が多くなってきている。

7.7.0.1 体位ドレナージとの併用もできる

重要な報告としては、モルテンセンらが1991年に報告したもので、これは体位ドレナージと強制呼出の組み合わせと、 PEEPと強制呼出の組みあわせとの喀痰排出の効果の比較をしたものである。それによれば、 両者は患者の喀痰の量にかかわらず、同じように効果的であったとしている。

また1993年には、ファルクらが強制呼出のみとPEEPと強制呼出との組み合わせとを比較し、 PEEPを負荷したほうが、効果が高かったと結論した。

最も長い期間の観察例では嚢胞性線維症の患者にPEEP治療を10カ月続けて行なったところ呼吸機能の改善を認めたが、 これを体位ドレナージ中心の治療に切り替えると、2カ月でもとの肺機能に戻ってしまい、 PEEPを再開して回復に6カ月を要したものがある。

PEEPは特に大きな合併症を生じた報告もなく、また患者が一人きりで行なえたという記録も多い。 この方法で問題となるのは、最も有効なPEEP圧がどれぐらいなのかはっきりしないという点である。

我々の意見では、この方法は重症患者で、無気肺が問題となった例では特に有効であるように思える。


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admin 平成16年11月12日