1979年に、オールデンバーグらは気管支拡張症の患者に体位ドレナージと咳とを組み合わせ、痰の排出の効率を評価した。
この結果、咳を行なうことで、末梢から中枢部に至るまでの痰の排出が促されたのに対し、 体位ドレナージのみでは喀痰の排出は促されないことが分かった。 彼らは効果的な咳を患者に行なわせる方法を考えなくてはいけないと結論している。
しかし一方で、効果的ではない咳は痰の排出を行なえず、呼吸筋の疲労を招き、低酸素血症を生じる。 このため不十分な咳しかできない患者には、咳の補助を行なう必要がある。
患者の咳を補助する方法は大きな可能性を持っている。
前にも述べたが、気道の不安定な人は、たとえ咳をしても気道が潰れてしまい、 十分に咳の効果を期待できない。例えば、気管支拡張症や嚢胞性線維症の患者である。
こうした患者の場合、強制呼気法がうまくいくことがある。これは中等度から少量の空気を吸った状態から、 咳を行なわずに一気に空気を吐き出す(ハッ!ハッ!という呼吸)ことで、この時に自分で自分の胸を圧迫すると、 なお効果的である。
こうすることで気道の安定性を保ったまま、痰の排出を促すことができる。ハフィングという。
プリオラらは1992年、強制呼気法を更に改良し、能動的呼吸と名付けた。強制呼気法は、 常にハフィングと対になって行なうべきであるが、これが広まるにつれて、 この方法が咳の一種であることが忘れられてしまった。
このため彼らは、強制呼気法を一種の呼吸法として、もう一度体系化した。
これは以下の7つの部分よりなる。
この方法の特徴は、強制呼気法の効果を得る一方で、酸素化にも配慮している点である。 この方法についての臨床研究は行なわれていないが、他の喀痰排出法に比べて遜色ない結果が得られるとされる。
この方法は小さな息の間に痰を気道から引き剥がし、中等度の息をしている間に痰を中枢気道に集め、 大きな息で痰を喀出するという理論に基づく。この方法は、末梢気道の空気を動かしてやることで、 粘液を一緒に動かすために考えられた。
現在バイオフィードバックの手法を用いるなどしてこの方法の教育法が研究されているが、 うまくいくかどうかは患者個人の性格によるものが大きい。この方法は中等度の重症度までの患者で、 日常生活を営みながら訓練を行なえる人には最適である。