以下の項目では、手術後の患者の呼吸不全に対するCPAPマスク、鼻マスクによる陽圧換気、 陰圧式呼吸器の効果についての研究をそれぞれ述べる。
初期のCPAPマスクは、肺水腫に対して用いられた。この文献では、 「肺水腫により上昇した肺血圧に打ち勝って、CPAP圧により酸素が血中に入っていく。」と述べられている。
1976年になり、グリーンバウムらが、急性呼吸不全の治療手段としてのCPAPマスクを再評価した。 そしてこの文献の中に、手術後呼吸不全に対するCPAPマスクの有用性が指摘されている。
CPAPを付加することにより、患者には様々な物理的作用が生じる。その良い点と悪い点を以下に述べる。
<良い点>
<悪い点>
この効果については、全ての患者について有効であると思われる。更にCPAPは胸腔内圧の上昇により、 上部の気道も更に拡げるため、呼吸抵抗も減少する。
他にも、手術後合併症には特に関係のない作用としては、特に肺気腫などで問題となる内因性PEEPを打ち消し、 呼吸の負担をとる作用などがある。
このためによる呼吸パターンの悪化、患者の不穏などがしばしばCPAPマスクの使用を難しくする。 この不快感は、CPAP圧を下げることである程度改善できる。しかし、圧を下げることで、 特に気道抵抗の高い人などではその効果も下がってしまう。
手術後の患者にCPAPを付加するのには、特に変わったものを用いる必要はない。
その道具とは、高流量酸素ブレンダー、リザーバーバッグ、PEEPバルブであり、これらは高流量の酸素で駆動される。
CPAPシステムの初期の問題は、このシステムが個人個人で特別に用意されるために時間がかかることであった。
1980年代に入り、シンプルなCPAPマスクシステムが市販されるようになった。今ではCPAPと同様に、 IPPVもマスクを通じて与えられる。
ほとんどの研究では、抜管後の呼吸不全に1日中CPAPマスクを用いているが、 再挿管を免れる率は60〜98%と様々である。多く認められた合併症は、鼻の発赤と潰瘍であった。
非侵襲的陽圧換気は、CPAP用のマスクを、人工呼吸器につなぐことにより始まった。
現在、非侵襲的陽圧換気は、専用の鼻マスクあるいはフルフェイスマスクを、普通の呼吸器か、 あるいはBiPAPにつなぐことにより得られる。
鼻マスクを用いた陽圧換気の効果は複雑であるが、基本的には普通の人工呼吸器と同じである。 しかし、マスクを用いた換気には空気漏れの可能性が大きく、その分換気の効率が落ちる。
その利点・欠点はCPAPマスクの項で説明した通りであるが、CPAPに陽圧換気を加えることで、呼吸の補助作用はより強まる。