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: 8 胸部異常陰影
: 呼吸器疾患の鑑別
: 6 気道の確保の方法
目次
索引
7 気管内挿管
適応には明確なものはない。気道確保が行われて、バッグ=マスク換気が適切に行われているうちは、慌てて施行する必要は無い。以下のようなケースが気管内挿管の絶対適応となる。
- 重度の誤嚥
- 低酸素血症
- マスクだけでは気道の開通を維持するのが困難なとき
- 気管内の吸引を行いたいとき
7.2 確実な挿管のコツ
喉頭鏡を用いた気管内挿管の成否は、術者の技量以上に患者のポジショニングにより左右される。
患者の頭が適切な位置にあった場合は気管内挿管は思いのほか容易であるが、
不適切な体位では誰がやっても挿管チューブは声帯を越えない。
図 5:
気道確保と気管内挿管の違い。左が気道確保、右が気管内挿管。
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患者の気道確保のポジションと、気管内挿管を施行しやすいポジションは違う。図5の右側が挿管ポジションであるが、頭部後屈というよりは、
むしろ患者がうつむくぐらいに頭を持ち上げたほうが喉頭展開はうまく行く。
正常安静時の気道には、喉頭の軸と咽頭の軸の2本の軸がある(図6)。平らな板の上で寝ていたり、または気道の確保を行ったりした際には
、これらの軸はずれているため、喉頭展開を行っても声門は見えない。
図 6:
安静時の気道の断面
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普段CPR中に、挿管に失敗するのはたいていこのまま挿管しようとしているからであるが、
ここで患者の首の下に枕を入れてやると、喉頭と咽頭の軸が一致する(図7)。
図 7:
肩枕を入れたときのの気道の断面
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この状態になった後で頸部進展位とし、喉頭展開を行うと直視下に声門を確認できる(図8)。
図 8:
喉頭展開
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7.2.3 歯を折らない喉頭鏡の持ちかた
喉頭展開が十分適切になされた上では、挿管は容易なはずである。
左手にマッキントッシュ喉頭鏡を持ち、右手で下顎を開く。このとき、有効に力を働かせるため、マッキントッシュは写真9のようになるべく根元の方を持つ。
図 9:
喉頭鏡の持ちかた
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右手の使い方であるが、拇指で患者の下顎を押し出し、ほかの指で患者の下顎を引き、
ちょうどハサミを作るように患者の顎を開く(図10)。
こうすることで、喉頭展開をかける前に口腔内の視野が開ける。
図 10:
右手の使いかた
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7.2.4 喉頭鏡の力の入れかた
マッキントッシュの力の入れかたは、図のようにグリップの方向にまっすぐかける(図11)。良い視野を得ようと、
ブレードの尖端を持ち上げようとすると前歯を折ることになる。
図 11:
力はまっすぐ入れる
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7.2.5 口腔の中の見えかた
喉頭展開までできても、上手く声帯が見えないことはよくある。
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上手く喉頭展開できると、声帯は口腔の真中に見える。ちゃんと喉頭展開ができていれば、視野の中に
声帯を見つけることは簡単にできる。見えずらいのは、喉頭展開が上手くいっていないときが多い。
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声帯が口腔の上の方に行ってしまっているとき、どんなにスタイレットを強く曲げても、
挿管チューブが声帯に届かないことがある。こうした場合は、肩枕の高さをあげ、
首を持ち上げるようにすると、声帯がよく見える。
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声帯は口腔の中心に見えていても、喉頭蓋が大きく垂れ下がり、視野をふさいでしまうことがある。
このときは、喉頭鏡のサイズをあげるか、喉頭鏡をもっと奥にすすめると、
喉頭蓋を挙上することができる。
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喉頭展開しても、全く何も見えないことがある。
この状態で挿管すると、100%食道挿管になる。
初心者に多いことであるが、これは喉頭鏡を奥に進めすぎ、食道を見ている像である。
喉頭鏡を静かにバックさせると、上から喉頭蓋が落ちてくるのが見える。そこから再び
喉頭鏡を進めると、喉頭展開が可能になる。
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7.3.1 食道挿管は患者を殺す可能性がある
成人で、口角から22cm入ったところが標準的な挿管チューブの位置であるが、
挿管チューブはカフを膨らませた状態であっても、
最大5cm近く動く。このため確実な挿管がなされたあとであっても、声門からチューブが抜けることは生じうる。
図 12:
大体口から声門までが12cm前後、声門から正しい位置までが10cm前後。
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食道挿管を疑う所見は以下のとおり
- 腹部の膨満
- 聴診上の呼吸音の消失
- 低酸素血症
- 挿管チューブが呼気で曇らない、
- 挿管チューブからの食物残渣の逆流
こういった所見があったならば食道挿管を疑い、直ちに喉頭展開下にチューブの位置を確認するか、
その場で抜管して再挿管を試みる。
聴診は当てにならないとはいわれてるが、最も簡単に施行できる。聴診を行う際には、
両側の腋窩で行うのがもっとも確実といわれる。
7.3.3 カプノメトリーは最も信頼性が高い
現時点ではカプノメトリーが最も信頼性が高いといわれている。
これは患者呼気中のCO2を検出するもので、
食道挿管の場合には、患者呼気中にCO2が出てこないことを利用し、食道挿管の有無を診断できる。
このデバイスは、患者の循環が停止している際には、たとえ挿管がうまくいっていてもCO2が呼気中に出現してこないため、
信頼精度が低下する39。
気道内のサクションを行った際、食道は軟骨を持たないために、容易に虚脱してしまう。
サクションを行っても、陰圧がかかるばかりで内容が引けない場合、食道挿管になっている可能性がある。
気道内に陰圧をかけることを利用して、食道挿管を判定する器具(図14)は、専用のものも発表されている。
図 13:
写真のボールを潰してから、挿管チューブにつける。すぐに膨らんだら、チューブは気管内に入っている。
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同じ原理を用いた道具は、病院にあるものを使って簡単に自作可能である。
図 14:
シリンジが抵抗無く引けたら、挿管成功。シリンジが引けなかったら、食道挿管の可能性がある。
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このデバイスは、食道と気管との解剖学的な差を検出しているため、心臓が動いていない人であっても
食道挿管検出の信頼性は下がらないとされている。
最近、こうしたデバイスを実際に用いたレポート40が発表された。
- 循環動態が保たれている人では、カプノメトリーや陰圧式確認デバイスは理論どおりに役に立った。
- 心肺停止状態の患者においてはこうしたデバイスの診断精度は下がり、聴診による挿管チューブの確認が最も正確であった。
- 気管内挿管中の患者は会話が出来ないため、鑑別診断は困難である。
- また、挿管中の患者の場合は、ショックの原因になる疾患の頻度が普通の患者とは違ってくる。
- たいていは重篤な状態なので、コールがあってもオーダーを電話だけで済ませるようなことはせず、必ず見に行って診察すること。
- 挿管中の患者の血圧低下を見たら、真っ先に以下の疾患の発生を疑う。見逃すと患者が死亡する可能性がある。
- 突然の血圧低下
すぐにポータブルの胸Xpをオーダーする。
- だんだんと血圧が下降してきた
まずは診察から。
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胸部単純写真をオーダー1
緊張性気胸が生じていないか確認する。待っている間に次の処置を行う。
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- 1 どうせ、呼んでから来るまでに15分はかかる。
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カテコラミンを開始する
- イノバン3A+生食85mlを5ml/hから。
- ノルアド1A+生食20mlを0.5ml ボーラス。
点滴も全開にする1。
これで時間を稼いでいる間に原因を探す。
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- 1 どうせラインは入っているだろう。
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呼吸器の動作チェックを行う
この間患者はアンビューで手動換気。
- テストラングを呼吸器回路に装着
- アラームがならずに換気が行われるのを確認
- テストラングを数回押して自発換気がトリガーされるのを確認
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admin
平成16年8月5日