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: 1.4 自分の身を守るためのチャーティング : 1. はじめに : 1.2 研修医が刑事告発される時代   目次


1.3 訴えられにくい医療行為

今の研修制度は、緊急脱出装置の使い方を教えずに、戦闘機の訓練を行うようなところがあります。 必死になって飛ぶことを覚えても、トラブル一つであの世行きです。

この2つの例では、もちろん前者のほうが症状は軽いでしょう。ところが、訴訟のリスクを考えた場合には、 歩いて来院した人の方が、心肺停止状態で運ばれた人などよりもはるかに危険度が高いのです。 こういった知識は、救急業務を長くやっていると自然に身につきますが、もちろん教科書には書いていません。

幸い、そういった人は、まだまだ少数です。"全ての患者は平等"とばかりに、そうした人に説教しても、 相手に不快感を与えるだけで、場合によっては訴訟になり、自分の人生まで失ってしまうかもしれません。

1.3.0.1 "正しい治療"を強行しても誰も喜ばない

救急外来に来る患者の中には、単に"抗生剤がほしい""検査してほしい"という人がよくいます。

こうした患者に対して、抗生剤の投与は必要無いことを諭したり、検査のために午前中に来院するよう話したりすると、 たいていトラブルの元になります。

実際、何とか患者を説き伏せて、"正しい治療"を行ったところで、

と、誰の利益にもなっていません。唯一、その日の不要な検査がなくなったために、 国民全体の無駄な医療費が、わずかにうくのかもしれません。しかしこれは、年間30兆円規模の国民総医療費から見れば、 誤差の範囲です。当院の研修医が睡眠時間を削り、毎晩患者を怒らせても、医療費節減には全くつながりません。

本当に無駄な医療を減らしたいなら、検査の代金を夜間は10倍にするとか、いくらでも方法はあります。 厚生省は悪役には絶対になりたくないでしょうから、こうなるとは思いませんが。 こういった問題は本来、国が何とかすべきで、研修医個人がいくら逆らっても、自分の身が危うくなるだけです。

夜間診療中の、"検査してくれ"は、納得できなくても逆らわないほうが、自分のためです。


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admin 平成16年11月12日