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2.19 喀血

85歳の女性。咳をすると血が混じったということで来院。独居であったために入院させたが、見た目は元気。

何気なく血液を採ったところ、Hbが6.5と低下。さらに腎機能が透析寸前まで悪化していた。 胸部単純写真は、右上葉がすりガラス様。

家族を呼んだが、東京で仕事中、ということで来たのは3日後。血漿交換、ステロイドの点滴を受けているのを見て いきなり激怒してしまい(何か事故があったと思ったらしい)、後の対応が大変だった。



"あんた少しは血管炎の勉強しろよ"、と思ったが、黙っていた。血管炎症候群の説明を分かってもらおうと 努力したが、どうしても"自己免疫"の部分が分かってもらえない。

ところが"癌より悪い病気です"と一言言うと、"そうでしたか。ありがとうございました"といきなりいい人になった。 変に正確な話を心がけるより、" 癌癌癌癌癌"といったほうが話が早いときもある。

2.19.1 鑑別疾患

吐血との鑑別を要する。咳と共に喀出され、真っ赤であれば喀血。そうでなければ吐血の可能性もある。喀血は少量で、 すぐ止まるのことが多いが、例外はいくらでもある。

主なものを示す

2.19.2 対処

喀血の際は、肺に血液を誤嚥しているかどうかが重要。進行性の低酸素血症を生じることがある。

  1. バイタルの確認。SpO2が保たれていれば、血液ガスは緊急にはいらない。 逆に低酸素血症があった場合、挿管の準備をしてすぐに上級医をコール。ポータブルの写真をオーダー。喀血の場合、低酸素血症は進行する。
  2. 胸部単純写真をとる。酸素が十分であれば、下におろしてかまわない。
  3. 写真が何とも無かったら、止血剤の点滴と(胃潰瘍や喘息・腎不全の有無を確認の上)インダシン座薬25mgの使用で様子を見る。
  4. 胸部単純写真上、血液の誤嚥があった場合、予想以上に大量の出血を生じている可能性がある。酸素を十分量用い、上記の対処をした上で採血。翌日も写真とHbはフォローする。低酸素血症が進行してきた場合、健側の肺に片肺挿管を行い、気道をプロテクトする必要があるかもしれない。
  5. いずれの場合でも、必ず上級医に報告すること。悪性腫瘍や陳旧性の結核が原因のことが多いため、その後の検査計画を決めなくてはいけない。
  6. 落ち着いたら、翌日にでも待機的にCTを切る。
  7. 症状が落ち着いたら、喀痰細胞診、症状が続くなら、一度はANCAのワークアップと尿蛋白のチェックを行うほうがいい。

特に血管炎を疑った場合は、必ず家族に"死ぬ可能性"をお話しておく必要がある。 症状は急速に進行し、救命の手段はないに等しいため、あらかじめ話をしておかないとトラブルになる。


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admin 平成16年11月12日