気管内挿管を行うにあたっては、鎮静と、場合によっては筋弛緩剤の投与は必須である。
鎮静にあたっては、代表的なベンゾジアゼピンの一つであるミダゾラム(ドルミカム)が良く用いられる。 これは静注薬であるが、副作用がジアゼパム(セルシン)よりも少なく、また半減期も2〜4時間と短い。
通常、セルシンなら10mg、ドルミカムなら5mg(単独で用いる場合)を静注で用い、挿管を行う。
挿管前の鎮静目的に、フェンタニルやモルヒネをベンゾジアゼピンと併用することが時々あるが、 これらは鎮痛作用を持つばかりでなく鎮咳作用もあるため、挿管時の処置が容易になる。
モルヒネ1〜2mgを静注した際の効果時間は、1〜2時間ぐらいである。しかしこれらを併用すると、 呼吸抑制が顕著に出るため注意を要する。
1941年より使用が開始された神経筋遮断薬は、麻酔の分野に目覚しい発展をもたらした。筋弛緩薬の登場により、 高濃度の吸入麻酔薬を用いることで筋弛緩を得る必要がなくなり、挿管もきわめて容易に行えるようになった。
神経筋遮断薬には大きく脱分極性薬物(スキサメトニウム5.2)と、非脱分極性薬物(パンクロニウム5.3、ベクロニウム5.4)との2種類が存在するが、 手早い挿管を必要とするときにはスキサメトニウムが選択されることが多い。
スキサメトニウムは効果の発現が約30秒と早く、また効果持続時間が5から20分と短いのが特徴である。 このため十分な筋弛緩を短時間で得ることができ、気管内挿管には理想的な薬物になっている。 通常投与量は成人では1mg/kgである。通常抗コリン薬のアトロピンを、副作用予防目的で事前に投与しておく。
非脱分極性薬は種類は多いが、効果発現が遅いため、 普通は脱分極性薬が禁忌の患者にのみ使用する5.5。