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: 4.2 胸水や気胸患者の息苦しさは、酸素濃度によらない : 4. 動脈血酸素量の評価 : 4. 動脈血酸素量の評価   目次


4.1 息苦しさはPaO2に比例する

どの教科書を見ても、PaO2は60mmHg程度あれば大丈夫と書いてある。一方、自分で試せばすぐにわかるが、 パルスオキシメーターをつけて息ごらえをしてみると、SPO2が95にでもなれば、 もう苦しくていられなくなる。どうしてだろうか。

4.1.0.1 人間の酸素濃度をモニターしている細胞は、頸動脈と、延髄の中との2箇所に存在している

図 4.1: 頚動脈にある、酸素濃度の受容体。これ以外に、延髄の後ろにも受容体がある。

\includegraphics[width=.3\linewidth]{reseptor.eps}

このうち、頚動脈内の細胞は、主にPaO2を測定しており、一方延髄のモニターはpHを測定している。このため、 生物学的に十分と考えられる酸素濃度(60mmHg、SpO2で90%)であっても、頸動脈のモニターは、脳に"苦しい" という信号を送る。一方、延髄の細胞は、組織の酸素供給が本当に足らなくなり、乳酸産生が始まって、 pHが下がるまでは信号を出さない。

このように、血液中の酸素濃度の変化に対しては、頸動脈の細胞のほうが敏感に働く。一方、本当に生きるか死ぬか、 というレベルで警告を出すのは、延髄のpHモニターのほうである。

4.1.0.2 頸動脈の神経細胞は敏感である反面、低い酸素濃度にすぐなれてしまう

一時、オウム真理教の信者が水中で何十分も過ごしていたが、あの人たちは頸動脈の受容体を、訓練で慣れさせている。 プロの海女さんなどにも、同じ事が起きている。

4.1.0.3 延髄呼吸中枢は、死に際まで働く

一方、延髄のpHモニターが危険信号を出した場合には、呼吸中枢は「自分は本当に危なくなっている」と解釈する。腎不全の患者に大呼吸をする人が多かったり、代謝性アシドーシスの患者がすごい過換気になるのは、このせいである。慢性呼吸不全の人では、血液中のHCO3の濃度が高い。このためCO2が貯留して呼吸性アシドーシスを生じても、髄液がなかなか酸性にならない。結果、呼吸が止まってしまう。4.1


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admin 平成16年11月12日