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上司とケンカした日には事故が起こる

経過

救急外来に、5歳の子供がタバコを飲み込んでしまったということで、来院。

来院したときには喘鳴が著明であり、呼吸数も上昇していた。

気管支喘息に準じた治療を行い、本人の呼吸困難は多少はよくなったものの、喘鳴は続いていた。 このため上級医を呼んだが、再度の吸入を指示したのみで、本人を見にはきてくれなかった。

吸入後もやはり喘鳴は残っており、再度コールをしたが、そのまま帰すように、との指示であった。

その晩はそのまま帰宅となったが、翌日になって症状が悪化。喘息重積状態で救急搬送となってしまった。

原因

当時、その上級医とは折り合いが悪く、その日の当直帯の前半にも、些細なことで ひどく怒られたばかりだった。

このため、オンコールの電話を入れる際にも萎縮してしまい、十分な情報の伝達ができなかった。

具体的には、2回目のコールを行った際、"本当に、ぜんぜんよくなっていないのか?"と詰問され、 "少しは落ち着いたようですが…"と返答してしまったところ、"じゃあ帰しておいて"と言われただけで 電話を切られてしまった。

本来は確認の電話をかけるべきだったかもしれないが、こちらにも再度電話をかける勇気はなかった。

対処

日勤の小児科グループをコール、すぐに入院の上加療を行い、事なきを得た。 しかし、"何で昨日帰したのか"と、家族とトラブルになってしまった。

オンコールの上級医は"救急外来の医者が吸入で落ち着いたと報告したため、大丈夫だと思ってしまった。" と報告書に記載した。

たしかに嘘はかかれていないものの、知らない人間が見たら、救急当直をしていた自分のせいでこうなったと、 受け取られかねない表現になった。

知識化

この事故の原因は、人間関係のまずさである。

おきてはならないミスは、自分が何か別の理由であせっている時、たとえば自分が幹事の飲み会に遅れそうな時や、 外来中に病棟からコールがあったときなどにおこりやすい。

上司とのトラブルは事故を生む

こうしたケース以外に、事故がおきやすいシチュエーションが、上級医との人間関係がうまくいかなくなったときである。

指示を確認しようとして"何度も同じことを言わせるな"と怒鳴られたり、わからなかった部分を確認 しようとして"少しは自分で調べろ"などと怒られるような日は、必ず何らかのトラブルが出ると覚悟したほうがよい。

対策としては、上級生に怒られた日は、慎重に指示の確認を欠かさないこと、 下級生を怒った上級生は、その日1日は急変があっても下が知らせてくれないと覚悟し、 患者とのトラブルが無いことを祈りながら自分で回診することであろう。

なかなか、上手くはいかないが。


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admin@WORKGROUP 平成14年11月13日