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病名はひとつではない

経過

86歳の寝たきりの女性が、意識障害を主訴に来院。呼びかけても反応がなく、 呼吸が早かったた。このため、胸部単純写真を施行したところ、肺うっ血が著明であった。

救急外来から、うっ血性心不全という診断でICU入室。心エコーではびまん性の心収縮の低下が見られたために、 利尿薬とACE阻害剤による心不全の治療を行ったところ、翌日には肺うっ血は軽快した。

しかし、意識障害は遷延したため、頭部CTを施行。見事なSAHであった。

原因

診断名が一つ決まるとそれ以上追求する気が失せる

心不全だけでは意識障害はこない。

意識障害の鑑別疾患は一応頭に入っていたが、この患者の場合には明らかな肺うっ血があったため、 意識障害もここからきたのだろうと勝手に考えてしまった。

実際には低酸素血症もアシドーシスもなく、血液データ上も意識障害の原因になるものはなかったにもかかわらず、 それ以上の精査は行わなかった。

明らかな診断名が一つ決まってしまったために、安心してしまったのだろうか?

対処

心不全については落ち着いたため、そのまま脳外科に転科。

一応、平和に退院となっている。

知識化

一度自分の頭の中で診断名をつけてしまうと、自分でそれを覆すのは難しい。

とくに、今回のケースのように、胸部単純写真上は確かに肺うっ血があった場合は、思考がそこで停止してしまう。

今回のケースは、POSのプロブレムリストを、#1心不全だけではなく、#2意識障害と分けて考えていれば、 その日のうちにCTを施行したかもしれない。

実際のカルテの記載は、心不全に関するものしか記載がなく、あたかも意識障害などそこになかったかのようであった。


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admin@WORKGROUP 平成14年11月13日