いくら充実したマニュアルを作っても、ミスをしないよう注意しましょう、と呼びかけても、それを守らないのが人間です。 絶対にミスがあってはいけない状況では、今までとは逆に、"人間の判断を全く当てにしない"システムが考えられています。
絶対に間違いが許されない職場、効率よりも確実性が要求される軍隊などでは、"復唱"を用いたシステムがとられます。
原因のはっきりしない、致命的なウィルス疾患でなくなった患者を解剖するときには、 病理医にも感染の危険があります。USAMRIID3.3などの、感染症対策の専門施設では、 こうした人を扱う際のマニュアル3.4を定めています。
処置にあたる人は、防護服を着た状態で、必ず2人体制で部屋に入ります。
処置は原則として一人で全て行い、もう一人の役割は"チェックリスト読み"です。 処置は、次のように進みます。
全ての手順を一人でやるのは、針刺し等の感染事故をなくすためです。特に、通常の手術の際など、 2人の術者が向かい合って刃物を動かすのは、針刺しのリスクを非常に高めます。
CDCの針刺し対策のガイドラインなどでも、向かい合っての手技は針刺しのリスクを増す、と警告しています。
エラーを予防する点で大切なのが、"復唱"の習慣です。 マニュアルを読む人、それを実行する人を分けることで、チェックリストどおりに行うのをサボってしまうことを避け、 またマニュアルどおりに術者が行っているかどうかを読み手が確認することで、マニュアルどおりの動作が確実に保証されます。
生きている患者の症状に合わせて対処することが多い医療現場では、 応用できる場面は少ないと思います。それでも、感染性廃棄物の処理、輸血や化学療法の薬剤の確認、 動注用プロスタグランジン製剤の調製、PTCAデバイスの確認、といった際には、 復唱の習慣を利用するとミスを減少できるかもしれません。