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"キレる人間"が前提のシステム

個人の思い込みはエラーを招きます。時間的にあせっているとき、あるいは極端に忙しく、精神的に追い詰められて いる状況では、エラーの確率が上がります。

それならばと、"忙しいときも落ち着いて、あせらないで診療をしましょう" などと掛け声をかけたりしても、何の効果も期待できません。

時間とともにストレスはたまる

何をやっても、精神的に追い詰められる状況は生じます。 煮詰まった医者はエラーを起こす、ということを前提にシステムを組むならば、 例えば などといった、精神的に煮詰まった医師が、自分だけでは診察を行えないようなルールを作成するべきです。

他人の受け持ち患者の急変は冷静に見られる

自分の受け持ち患者が急変した際、特に心肺停止状態になったときには、主治医の頭はパニックになります。 こういったときに"落ち着け!!"などと声をかけてもあせる一方で、逆効果です。

逆に、自分が受け持ちでない患者のCPRは、 非常に冷静に行うことが出来ます。これは、CPRの手順自体は決まっており、その患者のもともとの病気の種類で、 そう大きく変わるものではないからです。

患者が心肺停止状態になったときなどは、欧米では"codeブルー"という一斉放送がかかり、専門の医師が病院中から駆けつけます。 このとき、日本なら、CPRの指揮官は主治医でしょうが、これも他人に譲ってしまう、というルールを作ったほうが、 たぶんエラーは少なくなります。

ドクターストレススコア

航空業界では、パイロットの疲労、ストレスは、"フライト時間"という形で大雑把に推定できます。 これを利用して、ストレスのたまったパイロットが、危険なフライトに従事しないよう、予防することが出来ます。

医師の世界には、こうした疲労度のスコアリングをするシステムがありません。

外来の場合、表3.1のようなスコアリングシステムを作っておき、外来ナースが" この医者はもうすぐキレる" と判断した場合、 ナースの判断で生化スクリーニング採血を行い、主治医に見てもらってもいい、 といったルールを作ると、外来のほかのスタッフにも緊張感が出て、面白いと思うのですが…。


表 3.1: ドクターストレススコア。外来開始から、ある瞬間でのスコアの合計が12ポイントを超えると、"もうすぐキレる"と判断する。外来ナースにこう判断された医師は、外来を中断するか、外来での指揮権の一部が剥奪される。
医師の行動 状態 スコア
外来継続時間 2時間以内 0
  2〜3時間 +2
  3時間以上 +4
休息時の頭の角度 ほぼ垂直 0
  45度以下 +1
  頸をがっくりうなだれる +2
  ほぼ机と平行か、突っ伏す +4
医師の行動 頭をかきむしる +3
  流しで顔を洗い出す +5
  ペンをカルテに突き刺す +7
  患者の椅子を蹴る +10



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admin@WORKGROUP 平成14年11月13日