: 手技は下級生にやってもらう
: 「人はミスをする」を前提としたシステム
: 失敗に強いチームをつくる
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個人の思い込みはエラーを招きます。時間的にあせっているとき、あるいは極端に忙しく、精神的に追い詰められて
いる状況では、エラーの確率が上がります。
それならばと、"忙しいときも落ち着いて、あせらないで診療をしましょう"
などと掛け声をかけたりしても、何の効果も期待できません。
何をやっても、精神的に追い詰められる状況は生じます。
煮詰まった医者はエラーを起こす、ということを前提にシステムを組むならば、
例えば
- 1時間に6人以上診察が入った場合は、7人め以降は何があっても採血を行う
- 50人以上の患者を診た医師は、それ以後はキープの患者を含めて、必ず別の医師が診る
などといった、精神的に煮詰まった医師が、自分だけでは診察を行えないようなルールを作成するべきです。
自分の受け持ち患者が急変した際、特に心肺停止状態になったときには、主治医の頭はパニックになります。
こういったときに"落ち着け!!"などと声をかけてもあせる一方で、逆効果です。
逆に、自分が受け持ちでない患者のCPRは、
非常に冷静に行うことが出来ます。これは、CPRの手順自体は決まっており、その患者のもともとの病気の種類で、
そう大きく変わるものではないからです。
患者が心肺停止状態になったときなどは、欧米では"codeブルー"という一斉放送がかかり、専門の医師が病院中から駆けつけます。
このとき、日本なら、CPRの指揮官は主治医でしょうが、これも他人に譲ってしまう、というルールを作ったほうが、
たぶんエラーは少なくなります。
航空業界では、パイロットの疲労、ストレスは、"フライト時間"という形で大雑把に推定できます。
これを利用して、ストレスのたまったパイロットが、危険なフライトに従事しないよう、予防することが出来ます。
医師の世界には、こうした疲労度のスコアリングをするシステムがありません。
外来の場合、表3.1のようなスコアリングシステムを作っておき、外来ナースが" この医者はもうすぐキレる"
と判断した場合、
ナースの判断で生化スクリーニング採血を行い、主治医に見てもらってもいい、
といったルールを作ると、外来のほかのスタッフにも緊張感が出て、面白いと思うのですが…。
表 3.1:
ドクターストレススコア。外来開始から、ある瞬間でのスコアの合計が12ポイントを超えると、"もうすぐキレる"と判断する。外来ナースにこう判断された医師は、外来を中断するか、外来での指揮権の一部が剥奪される。
医師の行動 |
状態 |
スコア |
外来継続時間 |
2時間以内 |
0 |
|
2〜3時間 |
+2 |
|
3時間以上 |
+4 |
休息時の頭の角度 |
ほぼ垂直 |
0 |
|
45度以下 |
+1 |
|
頸をがっくりうなだれる |
+2 |
|
ほぼ机と平行か、突っ伏す |
+4 |
医師の行動 |
頭をかきむしる |
+3 |
|
流しで顔を洗い出す |
+5 |
|
ペンをカルテに突き刺す |
+7 |
|
患者の椅子を蹴る |
+10 |
|
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: 「人はミスをする」を前提としたシステム
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admin@WORKGROUP
平成14年11月13日