喘息発作中の患者は、吸気時、呼気時の気道抵抗が増している。 FEV1.0が予測値の50%まで低下すると、呼吸筋の仕事量は平常時の7〜10倍にも達する。
気道の抵抗が増すにつれて呼吸筋の仕事量も増加し、最終的には呼吸筋の疲労を招く。
こうしたケースでは、従来は気管内挿管による補助呼吸が行われたが、 喘息患者の場合は合併症が生じる可能性が高かった。
近年、COPDの急性増悪の患者に対する非侵襲的陽圧換気の効果が報告され、 呼吸仕事量の低減、気管内挿管の回避、酸素化の改善といった効果が証明されてきている。
重篤な喘息患者の場合も、理論上はCOPD増悪の患者の場合と同様、 非侵襲的陽圧換気の効果が期待できる。
こうしたケースに対しては、当初はマスクによるCPAPが用いられ、気管支の拡張、 気道抵抗の低下、無気肺に陥った肺の再拡張、 内因性PEEPの低減による呼吸筋仕事量の低減といった効果が報告されている。
また、BiPAPが普及する以前から、バードMk7などを用いたIPPBによる非侵襲的な人工換気に、 吸入療法を併用することが行われていた。
非侵襲的陽圧換気は、気管内挿管による換気に比べて以下のようなメリットがある。
さらに、気管内挿管をしないことで、患者とのコミュニケーションは保たれ、 気道の防御機構、嚥下といった機能も保たれる。
17人の治療抵抗性の喘息患者に非侵襲的陽圧換気を施行した報告では、 喘息患者においても非侵襲的陽圧換気は安全に施行する5ことができ、呼吸困難感の低減、血液ガス値の改善といった効果があるという。
また、17人のうち、気管内挿管を要した患者は2人だけであった。
非侵襲的陽圧換気を施行する際、意識障害のある患者、 急速に状態の悪化する患者についてはこの治療を行ってはならない。 さらに、非侵襲的陽圧換気は以下のようなケースでは禁忌である。
非侵襲的陽圧換気は、従来から用いられている、気管内挿管患者用の呼吸器に マスクをつけても、また非侵襲的陽圧換気の専用の機械を使っても行える。
前の17人の患者での報告では、従来型の呼吸器がプレッシャーサポートモードで用いられ、 これにフルフェイスマスクを装着して患者に施行された。
開始時のセッティングは、PEEPが0、PSが10cmH2Oから開始され、患者の状態を見て、 PEEPを3〜5cmH2Oに上昇、1回換気量が7ml/kg、呼吸回数が25回/分以下になるように PSが調節されている。
非侵襲的陽圧換気は4時間施行され、その後15分の休息時間をはさみ、また開始された。 気管支拡張剤は、呼吸器の回路中に投与された。