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: 4 入院の適応 : 救急外来での喘息治療 : 2 救急外来での治療   目次


3 ネブライザーの工夫で効率を上げる

3.0.0.1 ネブライザーは無駄になる薬が多い

気管支拡張剤の吸入療法は、喘息治療の柱であり、どこの外来でも必ず行われる。 一方で、特に超音波ネブライザーを用いている場合、患者が空気を吐いている際には、せっかくの薬剤は 全て空気中に散布されてしまい、肺に入っていかない。

これは、いかにも無駄が多く、また肺に入らず、口腔粘膜でとどまった薬剤は、頻脈などの副作用の 原因にもなる。

同じことを思う人は多いようで、この問題に対する工夫が、いくつも発表されている。

3.1 吸入経路を口にする

ネブライザーで投与される薬剤は、多くはマスクを用いて投与される。吸入される薬剤のうち、 鼻から吸入される薬剤は、鼻でフィルターされていまい、無駄になる。

エアゾールを鼻から吸入させた場合、口から吸入した場合に比べて、肺に入っていく量は半分程度になってしまう。

患者に、極力口で呼吸してもらうか、あるいは吸入にマウスピースを用いることで、吸入効率を高めることが出来る。

図 6: 呼気弁のついたマウスピース。口から吸って、口から生きを吐くことが出来、その間マウスピースを外す必要がない。

\includegraphics[width=.5\linewidth]{valve.eps}

3.2 リザーバー付ネブライザー

効率よくエアゾールを吸ってもらう方法として、従来から、Tピースと、呼吸器用の蛇管を利用したエアゾール用の リザーバーが用いられてきた。

図 7: 中央のジェットネブライザーの左に、蛇管がついている。患者の呼気時に、ここにエアゾールがたまるため、 簡単なリザーバーとして機能し、吸入効率を上げている。

\includegraphics[width=.5\linewidth]{adamsvn.eps}

これをもとに、もっと本格的なリザーバーバッグをつけたものも、製品化されている。

図 8: リザーバー付ネブライザーセット。マウスピースの反対側(写真右側)に、750mlのリザーバーがついている。

\includegraphics[width=.4\linewidth]{reserver.eps}
細かい構造を図9に示すが、このリザーバーのおかげで、呼気時のエアゾルが無駄にならないだけでなく、 患者の吸気時にも大量のエアゾルを吸入することが出来、下気道へのエアゾルの沈着率が向上したという。

図 9:8の構造。マウスピース(左)とリザーバーが、Tピースを介して接続されている。図には一方向弁があり、 患者の呼気がリザーバーに入らないようになっているが、これが無い製品もある。

\includegraphics[width=.6\linewidth]{reserver2.eps}

この方法は、救急外来の超音波ネブライザーとTチューブ、壊れたリザーバーマスクひとつで簡単に組み立てることが出来る。 一度、試してみてはどうだろうか。

3.3 連続式ネブライザー

気管支喘息急性期に用いる薬剤として、多分もっとも一般的なのはsalbutamol(ベネトリン)であろう。

この薬を、どのくらい投与するのが一番効果があるのかは、未だによく分かっていないが、 その効果発現には閾値が存在するといわれている。大体、総量5〜7.5mgを投与すると効果が出現し、10mgを超えると 副作用の頻度が増してくる。

3.3.0.1 間欠投与がいいのか、連続投与なのかはまだ議論がある

この量、7.5mgを、2.5〜5mgの20〜30分毎の分割投与を行ったほうがいいのか、一回で持続的な投与を行ったほうがいいのか については議論がある。

急性期の、重篤な喘息患者へネブライザーを行う際には、間歇的な投与よりも、連続的な投与のほうが、 効果がより高い、という報告がいくつかある4

図 10: 通常のリザーバーバッグによる酸素投与(左側)に、連続投与でネブライザーを加えている。ネブライザーには 点滴ポンプが接続され、連続的に気管支拡張剤が注入されている(図の右側)

\includegraphics[width=.8\linewidth]{continue.eps}

報告により量はまちまちであるが、大体7.5〜10mgを1〜2時間かけて投与したレポートが多く、 一応、安全性には問題なかったという。

3.3.0.2 点滴ポンプとネブライザーで、実行可能

やり方は、各施設にあるものを用いることになるが、例えばべネトリン2ml(5mg/ml)に生食10mlを加え、 シリンジポンプを用いて、超音波ネブライザー内に6〜12ml/hで滴下すれば、望んだスピードで連続投与が可能になる。


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admin 平成16年11月12日