患者の1回換気量を横軸に、患者の気道流量を縦軸にして曲線を描いたもの。 機械によってどちらが上に来るかさまざまであるが、ここでは吸気波形が上側、呼気波形が下側に来るものとして解説する。
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患者が吸気を開始すると同時に、フローボリュームカーブは時計回りに曲線を描く。
従来型の、フロー一定の従量式呼吸を行っている場合、吸気フロー波形は図のようにほぼ水平の直線になる。
患者の気道抵抗が変化すると、フローボリュームカーブの形は変化するが、従量式換気の場合はほとんど影響を受けない(図18)。
一方、圧制御式換気、あるいはプレッシャーサポート換気の場合は波形が変わる。
圧制御式換気の吸気フロー波形は図のように吸気直後がもっとも速く、以後漸減していくが、気道抵抗が上昇すると 吸気流速はそれに伴い落ちていく(図19)。
換気モードいかんにかかわらず、患者の呼気は呼出した瞬間が最もフローが速く、呼気終末に向けて漸減していく。 通常、このフローの減少のしかたは一定であるが、喘息患者やCOPD患者など、呼気の抵抗が増している患者の場合、 図20のように呼気フロー波形が変化する。
この変化のしかたというのは、細かく述べると以下のとおりである。
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患者の呼気が終了すると、呼気フローは必ずゼロに戻る。 このとき換気量もゼロに戻っているため、PEEPの値にかかわらず、呼気フローは必ず原点に戻る。
呼気フローが原点に戻っていないときは、患者の換気に異常がある。
換気量がゼロに戻っても呼気フローが続いている場合は、肺にエアートラッピングがあり、呼出ができない状態になっている(図21)。
気管支喘息、ARDS、心不全急性期など、AUTO-PEEPの状態になっている患者でこうした波形が良く見られる。 この場合、PEEP圧を上昇させたり、患者の呼気時間を延長させたり、といった対策が必要である。
吸気量よりも呼気量が少ない場合、図22の右のような波形が観察される。これは、人工呼吸器回路にリークを生じているときに 見られる。
一方、吸気量のほうが呼気量よりも多い場合、図22の左のような波形が観察される。 これは、患者が咳をしたとき、体位変換などで患者の1回換気量が変化したときに一過性に見られる波形である。
通常、フローボリュームカーブはなだらかな曲線を描く(図23)。これが細かくゆれているときは、気道内に分泌物が多く貯留 しているときのサインである。
波形を見なくても、臨床的にこれを把握することはできるはずだが、知っておくと何かと便利。