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: 5 カプノグラム : 呼吸器モニターのみかた : 3 圧-容量曲線   目次


4 フローボリュームカーブ

患者の1回換気量を横軸に、患者の気道流量を縦軸にして曲線を描いたもの。 機械によってどちらが上に来るかさまざまであるが、ここでは吸気波形が上側、呼気波形が下側に来るものとして解説する。

\includegraphics[width=.9\linewidth]{fv_normal.eps}

  1. 吸気の立ち上がりフローを見ると、呼吸器のモードが分かる。また、患者の吸気抵抗を推定することができる。
  2. 患者の呼気のピークは、呼気直後に生じる。このフローのを見ることで、患者の呼気抵抗の変化が分かる。
  3. 呼気フローは、徐々に減少していく。この減少の仕方も、気道抵抗によって変化する。
  4. フローボリュームカーブは、必ず最後はゼロに戻る。これがゼロに戻らないのは病的である。

4.1 吸気フロー波形

患者が吸気を開始すると同時に、フローボリュームカーブは時計回りに曲線を描く。

従来型の、フロー一定の従量式呼吸を行っている場合、吸気フロー波形は図のようにほぼ水平の直線になる。

患者の気道抵抗が変化すると、フローボリュームカーブの形は変化するが、従量式換気の場合はほとんど影響を受けない(図18)。

図 18: 従量式呼吸のフローボリュームカーブ。気道抵抗が変化しても、吸気フローはあまり影響を受けない。
\includegraphics[width=.4\linewidth]{flo_vol_resistance2.eps}

一方、圧制御式換気、あるいはプレッシャーサポート換気の場合は波形が変わる。

圧制御式換気の吸気フロー波形は図のように吸気直後がもっとも速く、以後漸減していくが、気道抵抗が上昇すると 吸気流速はそれに伴い落ちていく(図19)。

図 19: 圧制御式換気のフローボリュームカーブ。 $ 3\Rightarrow 2\Rightarrow 1 $の順で気道抵抗が上昇している。
\includegraphics[width=.4\linewidth]{flo_vol_resistance3.eps}

4.2 呼気フロー波形

換気モードいかんにかかわらず、患者の呼気は呼出した瞬間が最もフローが速く、呼気終末に向けて漸減していく。 通常、このフローの減少のしかたは一定であるが、喘息患者やCOPD患者など、呼気の抵抗が増している患者の場合、 図20のように呼気フロー波形が変化する。

図 20: 呼気フロー波形の変化。右側は正常波形。左側は気管支攣縮があり、気道抵抗が増している場合。
\includegraphics[width=.7\linewidth]{bronchospasm_fv.eps}

この変化のしかたというのは、細かく述べると以下のとおりである。

\includegraphics[width=.9\linewidth]{flo_vol_obst.eps}

  1. 呼気フローのピークが、気道抵抗の増加により低下する。
  2. 呼気直後から呼気フローが急激に減少する。
  3. 呼気フローが原点に戻らず、次の吸気の瞬間まで呼出が続く。

4.3 呼気フローが原点に戻らない場合

患者の呼気が終了すると、呼気フローは必ずゼロに戻る。 このとき換気量もゼロに戻っているため、PEEPの値にかかわらず、呼気フローは必ず原点に戻る。

呼気フローが原点に戻っていないときは、患者の換気に異常がある。

4.3.1 呼気がいつまでも続く場合

換気量がゼロに戻っても呼気フローが続いている場合は、肺にエアートラッピングがあり、呼出ができない状態になっている(図21)。

図 21: 換気量がなくなっても呼気が続いている(矢印)。
\includegraphics[width=.4\linewidth]{airtrap_flo_vol.eps}

気管支喘息、ARDS、心不全急性期など、AUTO-PEEPの状態になっている患者でこうした波形が良く見られる。 この場合、PEEP圧を上昇させたり、患者の呼気時間を延長させたり、といった対策が必要である。

4.3.2 換気量がゼロに戻らない場合

吸気量よりも呼気量が少ない場合、図22の右のような波形が観察される。これは、人工呼吸器回路にリークを生じているときに 見られる。

一方、吸気量のほうが呼気量よりも多い場合、図22の左のような波形が観察される。 これは、患者が咳をしたとき、体位変換などで患者の1回換気量が変化したときに一過性に見られる波形である。

図 22: 左側:回路内にリークがあるときの波形。右側:患者が咳をしたときの強制呼出時の波形。
\includegraphics[width=.7\linewidth]{flo_vol_airloss.eps}

4.4 フロー波形が乱れているとき

通常、フローボリュームカーブはなだらかな曲線を描く(図23)。これが細かくゆれているときは、気道内に分泌物が多く貯留 しているときのサインである。

図 23: 気道分泌物貯留時の波形
\includegraphics[width=.4\linewidth]{bunpitu.eps}

波形を見なくても、臨床的にこれを把握することはできるはずだが、知っておくと何かと便利。


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admin 平成16年11月12日