患者の気道内圧を横軸に、患者の換気量を縦軸にして曲線を描いたもの。 通常の陽圧換気の患者であれば、始点から反時計回りのループを描く。
正常な圧-容量曲線は、ちょうど傾けたラグビーボールのような形をしている。
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inflection point 付近の換気量の変化が大きいと、それだけ多くの肺胞が虚脱しており、換気が不安定になる。 また、一度動員された肺胞が再び虚脱することで、人工呼吸器による肺障害が進行してしまう。
重篤な肺疾患の場合、このinflection point 以上の圧のPEEPをかけると肺胞が動員された状態になり、 換気を安定化することができるとともに肺に対して保護的な換気を施行することができる(図10)。
圧-容量曲線は、吸気が終了した時点で頂点を作る。この頂点の角度が鋭く、ちょうど鳥のくちばしのようになったときには 肺胞が過剰に伸展している可能性がある(図11)。
このような波形を見た場合は、1回換気量が大きすぎる可能性がある。換気量を減少させたり、あるいは圧制御式の換気モード を選択することで肺の過伸展を防止できる。
ARDSや肺炎、肺線維症といった疾患では肺は硬くなり、病気の重症度に比例して肺コンプライアンスは低下する。
圧-容量曲線は、その傾きを見ることで患者の肺コンプライアンスを推定することができる。
肺コンプライアンスの正常値は50〜80 ml/cmH2Oであるが、この値が低下するとループ全体が水平に傾き、 コンプライアンスが増すとループ全体が垂直に近づく(図12)。
病気の進行、あるいは治療の成功により肺のコンプライアンスが変化すると、ループの傾きはその変化を反映して変わっていく。
一方、圧制御換気を行っている場合は、肺のコンプライアンスの変化はそのまま換気量の増加につながる(図13)。
1回換気量、肺コンプライアンスがともに同じであっても、気道抵抗が変化した場合はループの形は変化する。
具体的には、気道抵抗が高くなるほどループの幅が広がり、治療により気道抵抗が減少すると、ループの幅が狭くなる。
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例えば喘息患者などの場合、気管支拡張剤の効果が出てくると圧-容量曲線の幅が狭くなり、気道抵抗が減ってきたのが分かる(図15)。
理論的には、吸った空気はすべて呼出される。このため、圧-容量曲線は必ずループになるが、 これがそうならない場合がある。
図16のように、ループが閉じない場合は吸気に比べて呼気の量が少ない場合に生じる。 これは、呼吸器回路のどこかにエアリークがある場合で、リーク個所を探さなくてはならない。
一方、ループが閉じないのとは逆に、ちょうど"知恵の輪"のようになってしまうことがある(図17)。
この現象は、吸気に比べて呼気のほうが多くなる場合、具体的には患者が咳をしたとき、体位変換を行ったときなどに一過性に 見られるが、このような波形が常に見られるならば病的である。
圧-容量曲線が常にこのような波形になる場合は、肺のどこかにエアートラッピングを生じている。 患者のフロー波形を見ても内因性PEEPが高まっている波形をしているはずで、対策を考える必要がある。