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5 カプノグラム

カプノグラムは、患者の呼気中のCO2濃度を測定するものであるが、最近の人工呼吸器はカプノグラムを標準で装備するものが 増えてきた。

カプノグラムを連続測定することで、おおよそ以下のようなことが分かる。

正常波形は、以下のとおり。

\includegraphics[width=.9\linewidth]{capnogram1.eps}

  1. 患者呼気の開始とともに、CO2濃度が上昇していく。
  2. このあたりから、肺胞中のCO2が呼出されはじめる
  3. 呼気が終了する。この時点でのCO2濃度が、血液中のCO2濃度にほぼ等しい。
  4. 呼気の終了とともに、カプノグラムの曲線はゼロに戻る。

正常な肺であれば、カプノグラムの波形はほぼ同じ形がずっと続く(図24)。 これが不安定に上下する場合、何らかの病的な状態が考えられる。

図 24: 正常なカプノグラムは同じ波形が続く
\includegraphics[width=.7\linewidth]{cap_normal.eps}

5.1 カプノグラム波形の主な変化

図 25: 挿管チューブに閉塞が見られるときのカプノグラム
\includegraphics[width=.6\linewidth]{cap_obst.eps}

気道の攣縮や、挿管チューブの閉塞といった所見が見られる場合、呼気のカプノグラムがなだらかに立ち上がるようになり、 また呼気終末のCO2濃度が徐々に減少していく。

図 26: 過換気の患者のカプノグラム
\includegraphics[width=.6\linewidth]{cap_hyper.eps}

患者が過換気になっているとき、カプノグラム波形は正常のまま、CO2濃度が徐々に減少していく。

図 27: エアリークがあるときのカプノグラム
\includegraphics[width=.6\linewidth]{cap_leak.eps}
人工呼吸器回路にリークがあるときもまた、カプノグラムのピーク値が減少していく。

図 28: 食道挿管のときのカプノグラム
\includegraphics[width=.6\linewidth]{cap_syoku.eps}

気管内挿管直後、あるいは体位変換後に呼気中のCO2濃度がほとんどゼロに近くなってしまった場合、 気管内挿管チューブが気管から外れてしまった可能性がある。

5.2 死腔換気とカプノグラム

呼気終末のCO2濃度は、実際に測定した血液ガス中CO2濃度よりもわずかに低い。

これは、気管支内に止まっていた空気や、換気にかかわっていない肺胞からの呼気が混合するために 呼気中のCO2濃度が薄まるためであるが、これを利用して、患者の死腔換気の量を求めることができる。

図 29: カプノグラムと動脈血CO2の関係。図のYの部分が死腔換気の量を示している。死腔換気の正常値は、 $ Y/(X+Y) $が0.3以下とされている。
\includegraphics[width=.5\linewidth]{etco22.eps}

肺塞栓やショック、敗血症、ARDSといった病態の患者では、肺の循環が障害される。 病気の重症度が強いと、換気はできても血液の来ない肺胞が増加してくるため、 動脈血液中CO2濃度に比べて呼気終末のCO2濃度が大幅に減少する。 言い換えると死腔換気が増加するわけであるが、死腔換気の量の増加は肺の循環障害の程度を反映するため、 病気の予後の推定に用いることができる。

実際、動脈血中CO2濃度に比べて呼気終末CO2濃度の低いARDS患者は、そうでない患者に比べて明らかに予後が悪化することが 報告されている。


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admin 平成16年11月12日