カプノグラムは、患者の呼気中のCO2濃度を測定するものであるが、最近の人工呼吸器はカプノグラムを標準で装備するものが 増えてきた。
カプノグラムを連続測定することで、おおよそ以下のようなことが分かる。
正常波形は、以下のとおり。
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正常な肺であれば、カプノグラムの波形はほぼ同じ形がずっと続く(図24)。 これが不安定に上下する場合、何らかの病的な状態が考えられる。
気道の攣縮や、挿管チューブの閉塞といった所見が見られる場合、呼気のカプノグラムがなだらかに立ち上がるようになり、 また呼気終末のCO2濃度が徐々に減少していく。
患者が過換気になっているとき、カプノグラム波形は正常のまま、CO2濃度が徐々に減少していく。
人工呼吸器回路にリークがあるときもまた、カプノグラムのピーク値が減少していく。
気管内挿管直後、あるいは体位変換後に呼気中のCO2濃度がほとんどゼロに近くなってしまった場合、 気管内挿管チューブが気管から外れてしまった可能性がある。
呼気終末のCO2濃度は、実際に測定した血液ガス中CO2濃度よりもわずかに低い。
これは、気管支内に止まっていた空気や、換気にかかわっていない肺胞からの呼気が混合するために 呼気中のCO2濃度が薄まるためであるが、これを利用して、患者の死腔換気の量を求めることができる。
肺塞栓やショック、敗血症、ARDSといった病態の患者では、肺の循環が障害される。 病気の重症度が強いと、換気はできても血液の来ない肺胞が増加してくるため、 動脈血液中CO2濃度に比べて呼気終末のCO2濃度が大幅に減少する。 言い換えると死腔換気が増加するわけであるが、死腔換気の量の増加は肺の循環障害の程度を反映するため、 病気の予後の推定に用いることができる。
実際、動脈血中CO2濃度に比べて呼気終末CO2濃度の低いARDS患者は、そうでない患者に比べて明らかに予後が悪化することが 報告されている。