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2 気道内流速曲線

吸気、呼気に伴う呼吸器内の空気の流速をグラフにしたものが気道内流速曲線である。

吸気フローが上向きのグラフの場合、患者の吸気とともにグラフは上に振れ、吸気終末に基線に戻る。

その後、呼気の開始とともに最大呼気流速になり、呼気が終わりに近づくにつれて徐々に基線に戻る。

\includegraphics[width=.9\linewidth]{flow_time2.eps}

  1. 吸気開始と同時に、波形は上向きに振れる。吸気フロー波形を観察すると、呼吸器の換気モードが分かる。
  2. 吸気が終了すると同時に、波形は急速に下向きに触れる。
  3. 呼気とともに、波形は再び基線に戻っていく。換気モードにかかわらず、波形は一緒である。
  4. 呼気が終了すると、正常な換気を行っていれば波形は必ず基線に戻る。

2.1 吸気フローパターンと呼吸器のモード

呼吸器のモードには、大きく以下の2種類がある。

前者は流量一定、気道内圧は換気量により変化。後者は、換気量にかかわらず気道内圧を一定に保つように 呼吸器が流量を調節する。

後者のほうが、呼吸器の制御としてはより高度なことを行っている。

1回換気量を正確に決められるVCVに比べ、PCVは換気量が不確実な欠点がある。しかし、呼吸器のアラームの進歩、 何よりも肺に対してより愛護的な換気ができるということで、PCVが選択される機会が増えてきている。

図 6: 正常な気道内流速曲線。左はフロー一定の従圧式換気。右は気道内圧一定のPCV。両方とも、間にプレッシャーサポート換気 が入っていることに注意。
\includegraphics[width=.7\linewidth]{flow_time.eps}

従来型の従量式換気を行う場合でも、新しい呼吸器では患者に供給する フローのパターンを選択できる。人工呼吸器がどんなフローパターンを選択しているのかは、気道流速曲線を見ると 判別できる。

フローパターンには以下の3つがある(図7)。

図 7: 吸気フローパターンと気道内圧。左から一定流量、漸減波、サイン波。
\includegraphics[width=.6\linewidth]{Pruitt-fig2.eps}

一定流量
流量一定、あるいは方形波は最も基本的なフローパターンであるが、このパターンは肺がゆっくりと広がる。 このため、平均の気道内圧を低めにすることができるが、吸気終末にならないと肺が十分に広がらないため、 換気の効率は悪くなる。また、ピーク気道内圧は他の波形に比べて高くなる。

漸減波
漸減波は、生理的なフローパターンに近い波形である。漸減波を用いると、吸気の初期に最も多くの空気が 肺に流入するため、換気の効率が良くなる。また、肺胞を効率よく広げられるため、同じ1回換気量でも ピーク気道内圧が低くできる。反面、吸気の初期から気道内圧が高くなるため、平均気道内圧は高くなる。

近年良く用いられる圧制御換気も、フローパターンを見ると漸減波になっている。

サイン波
サイン波は、上記2者の中間の性質を持つ。一般に用いられることは少ない。

2.2 呼気曲線が基線に戻らない場合

正常に換気されている患者であれば、呼気曲線は次の吸気までには基線に戻る。

これが基線に戻らない場合は、次の吸気直前まで患者は息を吐き続けていることになる(図8)。これがAUTO-PEEPの状態である。

図 8: 左は正常波形。右が内因性PEEPが高い場合のフロー波形。吸気流量一定の従量式換気の場合。
\includegraphics[width=.6\linewidth]{PEEPi_2.eps}

AUTO-PEEPは、患者の呼気が終了する前に人工呼吸器の吸気が始まってしまうために生じる。 これを生じている状態では、患者の呼吸仕事量が増加してしまい、 また患者末梢気道の内圧が上昇してしまうため、呼吸不全の増悪や気胸の原因になったりする。

具体的には喘息発作、COPDなどで吸気を効率的に呼出することができない患者の場合、内因性PEEPが高くなってしまい、 患者のフロー曲線は図9のような波形になる。

図 9: 喘息患者のフロー波形。プレッシャーサポート換気中。
\includegraphics[width=.7\linewidth]{airtrap_flo_time.eps}

こうなった場合は何らかの対処が必要である。具体的には、以下のようなことを考慮する。


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admin 平成16年11月12日