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3 失神した
:
循環器疾患
:
1 ショック状態
目次
索引
2.0.0.1 外来での胸痛の鑑別
2.1 とりあえずの対処
2.2 胸痛を生じる疾患の治療
2.2.1 心筋梗塞/不安定狭心症
2.2.1.1 治療
2.2.2 解離性大動脈瘤
2.2.2.1 治療
2.2.3 肺塞栓
2.2.3.1 診断
2.2.3.2 治療
2.2.4 気胸
2.2.4.1 治療
2.2.5 心膜炎
2.2.5.1 治療
2.2.6 大動脈弁狭窄症
2 胸が苦しい
2.0.0.1 外来での胸痛の鑑別
米国の統計では圧倒的に虚血性心疾患の頻度が高い(表
1
)。
表 1:
胸痛の鑑別疾患
心筋梗塞
14%
不安定狭心症
24%
安定型狭心症
9%
肺塞栓
5.8%
他の肺疾患
5.8%
筋肉痛
5.4%
心膜炎
5.0%
その他
2.1 とりあえずの対処
致命的な胸痛
4つ
心筋梗塞
前胸部の締めつけるような痛み
大動脈解離
突発する背部痛/血圧の左右差
緊張性気胸
呼吸音の左右差/胸Xp
肺塞栓
頻呼吸とSpO2低下
虚血性心疾患が確定したならバファリン81を1錠内服してもらう
バイタルをとる
ショック状態であったら輸液全開、昇圧薬を開始する。
酸素を投与する
カヌラ3l程度から全例に開始。
聴診を行う
この時点で雑音が無い
後から出現したら心室中隔穿孔/乳頭筋断裂
呼吸音の左右差
緊張性気胸
喘鳴/頻呼吸
肺塞栓
点滴ラインを確保する
持続的な胸痛を生じる患者はCAGになる可能性がある。 カテーテル検査を行う手と反対側
1
で 点滴ラインをとる。
1
普通は左手にラインをとる
採血をとる
BUN/CRE高値
CAG時に大切
CK/CK-MB/GOT/LDH高値
心筋梗塞
トロポニン-i
1
高値
心筋梗塞/狭心症
CRP高値/血小板減少
大動脈解離
2
1
病棟に専用のスピッツがあります。
2
信じられないでしょうが…
12誘導心電図をとる
ST上昇
急性心筋梗塞
ST低下
狭心症/後壁の梗塞
重篤な不整脈
心電図モニターもつけておく。
亜硝酸剤を考慮する
心筋虚血の可能性があるとき
胸痛があり血圧が200以上あるとき
静注用ニトロールを1/2A
1
静注する。胸痛が取れるようならCAGを行うまで持続投与。
1
心筋梗塞の場合はニトロペン舌下のほうが合併症が少ないらしい
胸部単純写真をとる
肺うっ血
心不全/心筋梗塞
縦隔の偏位
緊張性気胸
縱隔の拡大
1
解離性大動脈瘤
1
臥位の写真では、もともと上行大動脈は拡大して写るので注意。
心エコーを行う
壁運動低下
心筋梗塞
1
心のう水
心タンポナーデ
右室の拡大
肺塞栓
大動脈弁逆流
解離性大動脈瘤
胸水
動脈瘤の切迫破裂
大動脈弁狭窄症/肥大型閉塞性心筋症の診断が可能
1
心電図所見とあわせて考える。
胸造影CTをとる
大動脈の解離
解離性大動脈瘤
肺動脈内の血栓
肺塞栓
大動脈拡大と胸水
動脈瘤の切迫破裂
2.2 胸痛を生じる疾患の治療
2.2.1 心筋梗塞/不安定狭心症
頻度は高い。胸痛を訴えて救急外来に来る患者の1/4は不安定狭心症である。
右手への放散痛、嘔吐、冷汗を伴う胸痛は心筋梗塞の可能性が高い。
僧帽弁逆流は疾患の進行に伴い頻度が増す。心雑音の変化に注意。
12誘導心電図上のST上昇(図
1
)は、しばしば見られないことがある
CK/CK-MBの上昇は梗塞後4時間ほどたってから明らかになる
トロポニンは梗塞後20分程で上昇する
他、心筋梗塞に伴ってWBC、LDH、GOTの上昇が見られる。
図:
冠動脈閉塞後の心電図変化。時間経過とともにA
Fへと進行。
2.2.1.1 治療
カテ室に行くまでに以下のことを行う。
診断がついた時点でアスピリン
6
を内服、ニトロペンを舌下してもらう。
呼吸困難があったなら酸素投与を開始
心電図モニターは必須
脱水があると冠動脈内の血栓が成長するので、ラクテックを100ml/h程度で開始
7
PTCAの準備に時間がかかるなら、ヘパリンを5000単位ボーラス静注
胸痛に対しては、ペンタジン15mg静注等の麻薬系鎮痛薬を用いる
治療後はバファリン、パナルジン、プレタール等の抗血小板薬に加えてACE阻害薬、スタチンの内服
8
を開始する。
2.2.2 解離性大動脈瘤
突発する背部痛。内科系の病気の中でももっとも痛い
9
ものの一つ。
上肢の血圧の左右差をみたり、時に鼠径動脈を触知しないことがある。
心電図は通常正常だが、解離が冠動脈に及ぶとST上昇を生じる。
胸部造影CTで解離を証明するが、解離腔が血栓化していると造影剤が入っていかず解離に見えないことがある。
可能なら経食道心エコーを施行すると解離腔の状態がよく分かる。
2.2.2.1 治療
緊急の降圧治療を行い、心臓外科の到着を待つ。
静注降圧薬
を使用。収縮期血圧の目標値は100-120mmHg。降圧とともに拍動のエネルギー
10
の低下を目標に、血管拡張薬に少量の
遮断薬を併用
11
する。
ミリスロール原液を2-3ml/hから開始。
ペルジピンの小さな方のアンプル(2mg)を1/2Aずつ静注。1回の静注で血圧は20前後下がる。
ペルジピン10mg+5%glu90mlを3ml/hより開始。最大18ml/hぐらいまで使用。
ヘルベッサー注100mg(2A)+5%glu100mlを5ml/hより開始。最大15ml/h程度。
痛みは血圧を上げるので、麻薬性鎮痛薬
12
を積極的に用いる。
2.2.3 肺塞栓
2.2.3.1 診断
胸痛に呼吸困難、頻呼吸、低酸素血症を伴うわりに胸部聴診は正常
13
。
外来に肺塞栓の患者が来る可能性は少ない。しかし入院中の患者では発症率は高い。
手術後の患者、脳梗塞患者など動けなかった期間のある人に発生しやすい。
胸部単純写真は正常であることが多いが、無気肺や肺動脈の拡大、心拡大を生じていることがある。
胸部の造影CTで肺動脈内に血栓が証明できれば確定診断。
余裕がある施設なら、緊急肺血流シンチを行うと診断できる。
血清中D-dimerが正常であるなら、肺塞栓である可能性は低い。
2.2.3.2 治療
SpO2 が90以上になるように、十分量の酸素を投与。
診断と同時にヘパリンを5000単位ボーラス静注。
その後ヘパリンを1000単位/時間程度で開始。
3時間ごとにAPTTをチェックしながら、APTTを60-80秒程度に保つ。
経口可能になったらワーファリンを5mg/1Xから開始し連日PTをチェック、PT-INRが2-3に入ったらヘパリンを中止しワーファリンの量を調節する。
外来から入院になった肺塞栓患者の多くは体のどこかに癌がある。ワーファリン使用前の消化管ワークアップとともに、消化器腫瘍のスクリーニングを考慮する。
2.2.4 気胸
突然の胸痛と呼吸困難。緊張性気胸になっていなければ、重篤感は薄い。
胸部単純写真で確定診断可能。
分からなければ肺野条件の胸部単純CTで診断。
2.2.4.1 治療
虚脱肺の面積が全体の20%以下であれば、何もせずに様子を見ても自然治癒することがある。
通常はチェストチューブ挿入による脱気が必要。
2.2.5 心膜炎
通常は上気道炎症状の後に胸痛を発症。
症状は徐々に発症するが、比較的典型的な狭心痛になる。
心電図上は全誘導のST上昇を生じ、R波の減高やSTの低下
14
を伴わないのが特徴。
心エコー上は左室の動きは正常。心のう水を伴い、タンポナーデを生じることもある。
2.2.5.1 治療
通常は保存的治療のみ。胸痛に対してはNSAIDsを使用。
心のう水の貯留を生じた場合は、穿刺可能であればドレナージをはかる。
心のう水の再発予防にはNSAIDs、コルヒチンの内服等が用いられる。
2.2.6 大動脈弁狭窄症
P.
参照
胸痛を伴う大動脈弁狭窄症の患者は手術の絶対適応である。
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admin 平成16年8月5日