外来は1日3人まで、当直明けは必ず休暇が保証されるといった環境では、医療事故はゼロにはならないものの、 激減するでしょう。
実際の外来は、
こうしたことが全て、外来担当医の判断を狂わせ、医療事故の引き金を引きます。
どこの病院でもそうでしょうが、外来診療は、出来高払いにはなっていません。ゆっくり診ても、早く診ても、 給料は同じです。この結果、ノロノロ外来をする医者のほうが医療事故が少なく、まじめにやっている医者が馬鹿を見るシステムが 現場で出来上がってしまっているのも大きな問題と思いますが、それでも1日にやってくる外来患者の総数は一緒です。
お願いですから、もっと早く診て下さい…。
外来をゆっくりやると、当然患者さんは待たされます。
待ち時間が長かった人ほど、自分の話を長々と聞いてほしがる傾向があります。このため、外来をゆっくりやるほど、 患者さんの話の時間は長くなり、またそれを無理にさえぎろうとすると、トラブルの引き金を引いてしまったりします。
外来診療をする医師を増やし、1日の受付人数を絞れば済むことですが、もちろんそんなことは日本では無理です。 何とかして、患者さんに怒られない範囲で、診察スピードを上げなくてはなりません。
内科のスタッフレベルで、外来患者をさばくスピードは、2時間に40人が最低ライン4.1です。
レジデントの外来は、恐らくこの1/4のスピードもないでしょうが、 患者さんの満足度は、スタッフが見た場合のほうが高いでしょう。
この差は何から来るのでしょうか。ひとつは主訴を書いたカルテが回ってきてから、 鑑別疾患が思いつくまでの速さが圧倒的に早いこと、もうひとつは、患者さんが外来に入ってから、 主訴が解決するまでの速さが早いことでしょう。
あたりでしょう。この手順のうち、(1)〜(3)の時間は、患者さんにとっては全くの無駄でしかありません。
「患者さんのために一生懸命頭を使っている」というかもしれませんが、目に見えない労働は、 患者さんにとっては全く無駄な待ち時間です。
早いスタッフの外来は、マイクで患者さんを呼んでから、初めてカルテを見ます4.2。呼んでから患者さんが来るまで30秒ほどの時間はあり、 これをやるだけでも外来の回転は随分よくなります。
スタッフは、外来中はほとんど脊髄反射で治療をしています。外来診療は、ほとんどの主訴に対する鑑別疾患と、 それに対する治療のパターンは決まっています。 本来、頭を使う機会はほとんど無いはずです。
たとえば頭痛がが1週間続き、吐き気があって食欲の落ちた人が外来に来たとします。
スタッフが外来をしていた場合、発熱、意識障害がなく、 SAHや重篤な髄膜炎がないことを確認したら速やかに解熱鎮痛剤を内服させ、 プリンペランなどの入った維持液を500ml程度点滴。その間に血液検査をオーダーするでしょう。
この間、採血が出るまでの1時間は、患者さんにとっても治療の時間になり、 またその間に別の患者さんをさばくことができます。
外来の遅い医師は、患者さんの話を聞いた後で検査をオーダー、結果が出るまでは何もしません。
確かに、ある程度の診断がつかないうちから医療行為をするのは、理論的には正しくないかもしれません。 しかし、患者さんにしてみれば、診察が終わったのに、いつまでも症状が取れないのは納得がいかないでしょう。
例えば発熱と食欲不振の患者さんの場合、採血をオーダーして、患者さんを1時間あまり待たせてから診察したとします。
たとえ結果に異常がなかったとしても、その時点での本人の症状は改善していません。 それから解熱剤や点滴を行っても、患者さんの満足度は低く、何もせずに帰そうものなら、"あの医者は、 散々検査だけして点滴もしてくれない" との評判が立つでしょう。
結果、診た人数が少ない割には、患者さんの満足度は低い、 という結果になってしまいます。
原因の分からない腹痛の患者さんにモルヒネを打つのは犯罪行為ですが、 お互いの時間の節約のために、以下のことぐらいはしてもいいと思います。
ほか、診察室に砂時計(2分計)を置くとか、診察室に患者さん用の椅子を置かない(本当にそういう病院がある)などもありますが、上記の範囲なら許されるのではないでしょうか。