これだけ。もっと大雑把に、PaO2 100、PaCO2 40、BE 0と覚えておいたほうが実用的かもしれない。
代謝性の酸塩基平衡の評価には、HCO3よりはBEを用いたほうが正しい評価ができる。
室内の空気を吸っている場合、肺胞機能が正常な人では大体、
たとえばCO2の貯留した呼吸不全の患者を見た場合、例えば酸素投与なしの状態でのPaO2が52mmHg、PaCO2が83mmHgであった場合、 両者の合計は135となる。
このような血液ガスデータをみた場合、肺炎のような肺自体の障害というよりは、 呼吸筋の疲労やCO2ナルコーシスなどが主な原因となっていると考える必要がある。 この場合、酸素投与量の増加を試みるよりむしろ人工呼吸器、BiPAPの準備などといった機械的な補助手段を優先的に考える。
一方、PaO2が70mmHg程度ある患者であっても、PaCO2が24mmHgなどと低下していた場合、患者は何らかの肺障害を持っており、 それを過換気を行うことで代償している。
たとえ酸素濃度が正常であっても、酸素投与を開始しておくほうがよい。
酸素投与下の血液ガスデータからも、その人が健康であったときの血ガスを推定することができる。方法を以下に示す。
pH 7.25 PCO2 90mmHg PO2 35mmHg BE 5mmol/l
の慢性呼吸不全増悪の患者の、普段の血ガスを考えてみる。
pH 7.40 PCO2 70mmHg PO2 70mmHg
の血液ガスを目標に、酸素投与を行う。知っていると、けっこう便利。
血液データ上CO2 が貯留していたり、またはO2 が極端に低いにもかかわらず、本人に症状が無いことがある。
こうした人の典型は、慢性期のCOPDや間質性肺炎の患者、あるいは右左シャントを持った心疾患の患者であるが、 こうした人は腎臓が代償をかけていたり、Hbが高かったり、あるいは心拍出量をあげていたりすることで、 体全体としてのつりあいはとれている。
本人に症状の変化が無く、またバイタルサインに大きな変化が無いのに異常な血液ガスを見た場合、 その値がその人の普段の正常値である可能性が高い。慌てて"治療"にかかる前に、その人の体の中で、 何らかの代償が行われていないかどうかを考える必要がある。