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: 4. 心臓マッサージ : 気道確保と初期のCPR : 2.7 挿管チューブの確認   目次

3. 気管挿管以外の気道確保手段

喉頭展開をきちんと行っても声門が見えてこない場合は、とりあえず気道を確保するために何か他の手段を考える必要がある。

3.0.1 そもそも喉頭展開するから合併症が生じる

何とか喉頭展開が出来そうな患者であれば、マスクで換気を行い、態勢を立て直してから再挿管を行う3.1が、 喉頭展開も出来ないケースでは、ラリンゲルマスクやコンビチューブといった他の手段を考える。

これらのデバイスは、いずれも喉頭展開や頚部の伸展が必要無く、盲目的な挿入が可能になるよう考えられている。

図 3.1: 左からCOPA、コンビチューブ、ラリンゲルマスク

\includegraphics[width=.6\linewidth]{ct-phoen1xy.eps}

3.0.2 COPA

3.0.2.1 最も簡単な気道確保の方法

カフ付き口咽頭エアウェイは、1992年にはじめて紹介された。 通常の経口エアウェイに、カフがついた形をしている。

図 3.2: カフ付き咽頭エアウェイ。エアウェイの尖端でカフが膨らみ、気道を開く

\includegraphics[width=.5\linewidth]{copa.eps}

3.0.2.1.1 気道は開いているが、全く保護されない

これは、エアウェイを入れられる人なら誰でも挿入可能であるが、患者が誤嚥した際には吐物の逃げ場が無く、 大変なことになる。

主に、自発呼吸がしっかりしている患者の短期間の手術、あるいは、COPAでとりあえず換気を行い、 その間に鼻から気管支鏡を用いて挿管を行う際などに、用いられる。

3.0.3 コンビチューブ

3.0.3.1 食道、気管のどちらに入っても換気が出来る

3.3を参照。盲目的に挿入し、本来は食道に、本体が入ることを想定して作られている。どちらかというと、 手術中の麻酔の維持よりは、救命救急のために考えられたデバイス。ものすごく硬い作りをしている。

図 3.3: コンビチューブ。1番のチューブは尖端が開いておらず、側孔から空気が出る。2番のチューブは尖端に開口

\includegraphics[width=.5\linewidth]{ct-1x.eps}

挿入は図3.4のように、喉頭展開をせずに行う。ほとんどの場合は食道に入り、1番目のチューブで換気が可能。 運良く気管に入ったら、2番目のチューブで換気する3.2

図 3.4: コンビチューブの挿入。左のように、顔面に対して垂直にゆっくり挿入すると食道に入り、換気が出来る。 もしも気管に入ったら通常の挿管チューブと同じように換気する

\includegraphics[width=.7\linewidth]{combi2.eps}

3.0.3.2 構造上サクションはできない

このデバイスは、食道からの吐物も尖端のバルーンでブロックすることができ、また陽圧換気もできる。 自発呼吸の全くない患者にも使用でき、サイズも1種類でほとんどカバー可能、CPRにも使用可能であるなど、メリットは多い。 救急外来でも、下手な人間がいいかげんな挿管を行うよりは、よっぽどいいと思う。

食道の裂傷の報告があり、食道静脈瘤の患者などには禁忌とされている。 また、重積発作を生じた気管支喘息の患者に用いても、十分な換気が出来なかったという報告もある。

3.0.4 ラリンゲルチューブ

3.0.4.1 コンビチューブの改良品

コンビチューブは、食道裂傷の可能性や、気管内サクションが出来ない欠点などがある。 この欠点を改良した製品が各社から発表されている。ラリンゲルチューブはそのひとつ。

図 3.5: ラリンゲルチューブ。食道バルーンが短く、食道を損傷しにくくなっている。先端は必ず食道内に入る必要がある

\includegraphics[width=.7\linewidth]{lt3.eps}

3.0.5 ラリンゲルマスク

3.0.5.0.1 救急隊で、コンビチューブとともに用いられる

ラリンゲルマスクは、挿管チューブよりも短いチューブの先端に、喉頭を覆う形をした小さなマスクが接続されたもの。

図 3.6: ラリンゲルマスク。ちょうど、喉頭を覆うように挿入される。

\includegraphics[width=.7\linewidth]{lma2.eps}

特徴としては、喉頭展開せずに簡便に挿入できる、患者の頭側ではなく、足側に立っても挿入可能など。

図 3.7: 親指を使い、患者の足側からマスクを挿入するテクニック。

\includegraphics[width=.6\linewidth]{sumtech.eps}

挿入方法が独特なものの、慣れると数秒で挿入でき、気管挿管よりも迅速な気道確保が可能といわれている。

一方で嘔吐、誤嚥、溺水や、喘息重責発作など、気道内圧が高いことが予想される場合は禁忌。

気管挿管よりも簡単で、挿管までの時間が早いためか、救急隊が行う気道確保に、これを用いるところが増えている。 一方、サイズを合わせないとリークが増え、ちゃんとフィットしたマスクが選択可能な患者の数は7割程度であるという。

3.0.6 どうしても入らない場合

筋弛緩もかけてしまい、それでもなお挿管できないようなときはどうすべきか。このときはマスクによる換気に戻り、 もっとうまい人を呼ぶか、あるいは外科を呼んでもらう必要がある。

マスクの保持ができているなら、換気に際して困ることはまず無い3.3

何らかの理由で、絶対に挿管が必要な場合は、輪状甲状靭帯より気道内に穿刺をし、ガイドワイヤーを口まで誘導した上で、 それを使って挿管する(図3.8)。

図 3.8: 逆行性挿管。ワイヤーを口から出したあとは、ワイヤーを挿管チューブの側孔に入れたほうが、 より深く入れられる(左下)

\includegraphics[width=.7\linewidth]{reverse.eps}

それでもだめなら外科的な気道確保を試みることになるが、いずれにしても一人ではできない。




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