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2.7 挿管チューブの確認

2.7.1 挿管チューブは動く

気管挿管は合併症が多い。特に、チューブが食道内などの 誤った位置に挿入されていた場合は、患者さんが死んでしまう。

口角から22cm入ったところ(図2.17)が、成人での標準的な挿管チューブの位置。 ところが挿管チューブは、カフを膨らませた状態であっても、首の向きなどで最大5cm近く動く。 このため確実な挿管がなされても、後から声門からチューブが抜けることは生じうる。

図 2.17: 大体、口から声門までが12cm前後、声門から正しい位置までが10cm前後。図はドイツのもので、 かなり大きい数字が書いてある。

\includegraphics[width=.5\linewidth]{v6_4inst.eps}

以下のような所見が出たら、挿管チューブが声門から外れて、 食道挿管となっている可能性がある。

こういった所見があったならば、直ちに喉頭展開を行ってチューブの位置を確認するか、 とりあえずその場で抜管して、再挿管を試みる必要がある。 胸部単純写真を撮っても挿管チューブの位置を確認することはできるけれど、 緊急時にそれをやっていたのでは間に合わない。

2.7.2 食道挿管の確認方法

2.7.2.1 聴診は当てにならない

聴診は当てにならないとはいわれてるが、最も簡単に施行できる。聴診を行う際には、 両側の腋窩で行うのがもっとも確実といわれる。

2.7.2.2 カプノメトリーは最も信頼性が高い

現時点では、カプノメトリーが最も信頼性が高いといわれている。

これは患者呼気中のCO2を検出するもので、 食道挿管の場合には、患者呼気中にCO2が出てこないことを利用し、食道挿管の有無を診断できる。

例外はマスク換気で腹部が膨満している場合で、 最初の数呼吸は、わずかにCO2が出ることがある。

心停止した患者さんの場合、たとえ挿管がうまくいっていても、CO2が呼気中に出現してこない。このときには、 このデバイスの信頼性は低下する2.4

2.7.2.3 気道内の陰圧を用いた確認法

陰圧をかけると、食道は軟骨を持たないために容易に虚脱してしまう。

サクションを行っても、陰圧がかかるばかりで内容が引けない場合、食道挿管になっている可能性がある。

気道内に陰圧をかけることを利用して、食道挿管を判定する器具(図2.18)が発売されている。

図 2.18: 写真のボールを潰してから、挿管チューブにつける。すぐに膨らんだら、チューブは気管内に入っている。

\includegraphics[width=.6\linewidth]{detector.eps}

同じ原理を用いた道具は、病院にあるものを使って、簡単に自作可能(図2.19)。

図 2.19: シリンジが抵抗無く引けたら、挿管成功。シリンジが引けなかったら、食道挿管の可能性がある。
\includegraphics[width=.6\linewidth]{innatu.eps}

このデバイスは、食道と気管との解剖学的な差を利用しているため、心臓が動いていない人であっても 食道挿管検出の信頼性は下がらないとされている。

2.7.2.4 心臓が止まっている人の挿管チューブの確認

こうしたデバイスを実際に用いたレポート2.5が発表された。

循環動態が保たれている人では、カプノメトリーや陰圧式確認デバイスといった、食道挿管の有無を確認する デバイスは理論どおりに役に立ったが、心肺停止状態の患者においては、こうしたデバイスの診断精度は下がり、 むしろ聴診による挿管チューブの確認が最も正確であったという。

以下のようなことが考察に述べられていた。


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