口角から22cm入ったところ(図2.17)が、成人での標準的な挿管チューブの位置。 ところが挿管チューブは、カフを膨らませた状態であっても、首の向きなどで最大5cm近く動く。 このため確実な挿管がなされても、後から声門からチューブが抜けることは生じうる。
以下のような所見が出たら、挿管チューブが声門から外れて、 食道挿管となっている可能性がある。
こういった所見があったならば、直ちに喉頭展開を行ってチューブの位置を確認するか、 とりあえずその場で抜管して、再挿管を試みる必要がある。 胸部単純写真を撮っても挿管チューブの位置を確認することはできるけれど、 緊急時にそれをやっていたのでは間に合わない。
聴診は当てにならないとはいわれてるが、最も簡単に施行できる。聴診を行う際には、 両側の腋窩で行うのがもっとも確実といわれる。
現時点では、カプノメトリーが最も信頼性が高いといわれている。
これは患者呼気中のCO2を検出するもので、 食道挿管の場合には、患者呼気中にCO2が出てこないことを利用し、食道挿管の有無を診断できる。
例外はマスク換気で腹部が膨満している場合で、 最初の数呼吸は、わずかにCO2が出ることがある。
心停止した患者さんの場合、たとえ挿管がうまくいっていても、CO2が呼気中に出現してこない。このときには、 このデバイスの信頼性は低下する2.4。
サクションを行っても、陰圧がかかるばかりで内容が引けない場合、食道挿管になっている可能性がある。
気道内に陰圧をかけることを利用して、食道挿管を判定する器具(図2.18)が発売されている。
同じ原理を用いた道具は、病院にあるものを使って、簡単に自作可能(図2.19)。
このデバイスは、食道と気管との解剖学的な差を利用しているため、心臓が動いていない人であっても 食道挿管検出の信頼性は下がらないとされている。
こうしたデバイスを実際に用いたレポート2.5が発表された。
循環動態が保たれている人では、カプノメトリーや陰圧式確認デバイスといった、食道挿管の有無を確認する デバイスは理論どおりに役に立ったが、心肺停止状態の患者においては、こうしたデバイスの診断精度は下がり、 むしろ聴診による挿管チューブの確認が最も正確であったという。
以下のようなことが考察に述べられていた。