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: 7 臨床応用
: IABPに関する話題
: 5 IABPの体の中での位置
目次
IABPの効果を十分に発揮するには、バルーンの膨張(インフレーション)、収縮(デフレーション)の
タイミングが重要である。
バルーンをインフレートするタイミングは、大動脈弁の閉鎖の直後である。これにより、
冠動脈血流量増加する効果が最大になる。
一方、バルーンのデフレートを行うタイミングは、左心室が収縮する直前である。
バルーンのデフレートにより、心臓のアフターロードを低減し得る。
図 6:
ディクロティックノッチ。心臓の収縮期と、拡張期とを分ける点である。この位置は、心電図では
T波の末端になるため、動脈圧波形のほうが位置を決めやすい。
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図 7:
正常大動脈圧波形と、心電図の関係。T波の終了間際に拡張期が始まり(図のDN点)、QRSの開始とほぼ同時に
心臓収縮期が始まる。IABPのタイミング調整は、この圧波形と心電図とを見ながら行う。
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実際の現場では、バルーンのデフレーションはR波の直後に行い、
バルーン収縮後の心臓の収縮期圧のピーク値が低くなるように設定する。
体内では、バルーンのインフレート/デフレートは機械で設定したタイミングよりもわずかに遅れる2。このため、バルーンデフレートのタイミングは、最終的には
動脈圧波形を見ながら微調整する3必要がある。
バルーンインフレーションのタイミングは、大動脈圧波形のディクロティックノッチ(図6)
に合うように調整する。
図 8:
理想的なIABP波型。正常な圧波形に比べて、拡張期血圧は上昇(図のD点)し、バルーンの収縮により、
収縮初期に吸引効果(図のE)を生じている。
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IABPを駆動させた直後は、圧補助は1:2で行い、IABPの圧波形を見ながら、この波形になるように微調整を行う。
以下に、バルーンのタイミングが悪いケースを示した。
図 9:
インフレートが速すぎた場合。バルーンのインフレートのタイミングが早すぎると、
大動脈弁が閉鎖する前に血流が逆流する。
このため生じた大動脈弁逆流により、左室拡張末期圧は上昇し、心臓の負担が増えてしまう。
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図 10:
インフレートが遅すぎた場合。バルーンのインフレートのタイミングが遅すぎると、今度はバルーンによる拡張期の血流量増加の効果が十分に
得られない。動脈圧波形上はディクロティックノッチが確認でき、またdiastolic augmentationが十分に効かない。
今度は、冠動脈の血流量増加の効果が減少してしまう。
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図 11:
デフレートが速すぎた場合。バルーンのデフレートのタイミングが早すぎると、心臓が拡張期であってもバルーンによる血液
吸引効果が生じてしまう。動脈圧波形上は、diastolic augmentationの急峻な減少が見られ、また自己の心収縮波型が
増高する。このために、アフターロードの減少効果が十分でなくなり、冠血流が吸引された結果、
狭心痛を生じるケースもある。冠動脈の血流量、および脳血流量は低下する。
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図 12:
デフレートが遅すぎた場合。バルーンのデフレートのタイミングが遅すぎると、
心臓が収縮している時にもバルーンが拡張している(図のn の部分)。
自己の心収縮波型は、このため著しく減少し、末梢血管抵抗はバルーンの分だけ増加する。
当然、心臓の仕事量が増えてしまう。
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admin
平成17年3月19日