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7 臨床応用

7.1 適応疾患

IABPは、虚血に起因する心機能を持った患者の、有効な治療のひとつである。

IABPを使用した、16,909人の患者の調査では、適応となった患者は以下のとおりであった。

7.2 急性冠動脈症候群

大動脈内バルーンパンピングは、急性心筋梗塞か、不安定狭心症の患者のST異常を縮小し、 内科的治療に反応がない狭心症の治療に有効である。

7.3 心原性ショック

7.3.0.1 IABPだけが、心原性ショックの血行動態の改善に有効

急性心筋梗塞の患者がショックになった場合、IABPだけが、心原性ショックの血行動態の改善に有効である。

血行動態の反応は、僧帽弁逆流や心室中隔穿孔といった合併症を持った患者で、 とくに有効である。こうした患者にIABPを用いることで、心拍出量は増加し、肺毛細管楔入圧は減少する。

血栓溶解療法、またはPTCAが行われる前に挿入されたIABPは、薬物治療の効果のなかった 心筋への血液灌流を再開しうると報告されている。

7.3.0.2 血行再建をしないと効果は薄い

一方、IABPが、血管再開通療法と併用されない場合、その予後改善効果は十分に生かされない。 血管の再開通が行われなかった心臓性ショックの患者の死亡率は、報告では83%と、非常に高かった。

GUSTO-14のサブグループ分析では、 急性心筋梗塞の後にIABPを挿入することで、 心臓性ショックを持った心筋梗塞の患者の死死亡率が減少するかもしれないと報告されている。 心原性ショックで入院し、IABPを挿入された患者は出血の合併症が多かったが、 一方、30日目の生存率は、IABPを挿入されなかった患者よりも少なかった。

7.4 ハイリスクのPTCA

大動脈内バルーンパンピングは、ハイリスクかまたは複雑な手技が予想される血管形成において有用かもしれない。 または、血栓溶解療法に失敗した、救命的なPTCAにおいて、 効果があるかもしれない。

7.4.0.1 ハイリスクPTCAの成功率は向上する

たとえば、心不全を伴った(LVEF24%以下)の患者に対してPTCAを行う際、 予防的なIABP挿入を行うと、PTCAの成功率は、24時間以内の死亡、あるいは心筋梗塞 を生じずに、96%の症例で成功すると報告されている。

IABPはさらに、PTCA中、もしくは手技後の合併症を減少させるかもしれない。

7.4.0.2 PTCA後の不整脈も予防しうる

急性心筋梗塞で入院した、1490人の患者のスタディでは、PTCAの前に挿入されたIABPは、 心臓性ショック、またはうっ血性心不全を持った患者に対して、予防的なIABPを挿入することで、 心室性細動あるいは心室頻拍、あるいは治療を要する低血圧の頻度が減少したという。

7.5 急性心筋梗塞に対するPTCA

IABPは、急性心筋梗塞中にPTCAを行った患者の、冠状動脈の開存を維持しようとして、使用されることがある。 複数医療機関による報告では、急性心筋梗塞で入院した患者にプライマリーPTCAを行った後、 スタンダードな治療(ヘパリン)と、スタンダードな治療にIABPの挿入を追加した群とで予後を比較している。

7.5.0.1 心筋梗塞再発率は低下した

結果、48時間のIABPを治療に加えることで、死亡、あるいは脳梗塞、 心筋梗塞の再発率は有意に低下(13対24%)し、また、 フォローアップCAGでの責任血管の再閉塞率も有意に低下(8対21%)した。

7.6 難治性の心室不整脈

IABPは、内科的な治療に対する反応が悪い心室性頻脈、 または選ばれた患者の心室性細動の治療に寄与することができる。

IABPが効果がある患者としては、著しい左心不全を生じた患者、 あるいは不整脈が血行動態に著しい悪影響を与えている場合があげられる。

難治性の不整脈の治療のためにIABPが挿入された、18人の患者の報告では、 18人中13人はIABPから離脱することができたが、5人は心移植が行われるまでIABPの継続が必要であったという。


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admin 平成17年3月19日