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: 5 IABPの体の中での位置 : IABPに関する話題 : 3 IABPの作動原理   目次


4 血行動態に与える影響

4.1 体循環に与える効果

心臓周期と同期された大動脈カウンターパルセーションは、1969年に心原性ショック中の患者 ではじめて使用された。 このデバイスは心臓の収縮と同時にバルーンが収縮し、心臓が拡張期に入って大動脈弁が閉鎖すると同時に 拡張することで、心臓に以下のような血行力学上の効果を与える。

図 3: 心臓が拡張すると同時にバルーンも拡張する。ここで血液は大動脈を逆流し、冠動脈から心筋に 流れ込む。

\includegraphics[width=.6\linewidth]{diastole.eps}

図 4: 心臓が収縮する瞬間、バルーンは収縮する。心臓の中の血液はバルーンに吸引された形になり、心臓の仕事量が 減少する。

\includegraphics[width=.6\linewidth]{systole.eps}

4.1.0.1 効果の程度は患者ごとに異なる

これらの効果は、体内でのバルーンの位置、患者心拍数、 大動脈のコンプライアンスなどにより、変化する。

IABPの効果が一定しないにもかかわらず、心臓性ショックを持った大多数の患者の血行動態のプロフィールは、 好ましい方向に変化しうる。

文献で報告されている、血行動態上のメリットには以下のようなものがある。

さらに、大動脈内バルーンパンピングは収縮期圧を縮小し、アフターロードを下げることで、 計算上は左心室の壁応力を14%低下させうる。

アフターロードの低下、および壁応力の低下は、結果として心筋の酸素消費量の低下を生じる。

4.2 冠状動脈血流上の効果

IABPは、冠動脈の血流を変化させる。 いくつかの研究では、冠動脈の血流の変化はほとんどなかったと報告されている。 一方、他の報告では、冠動脈血流量は増加したと報告されている。

この報告の差は、冠動脈血流量が、冠動脈血流量の自動調節能力の影響を受けること、 狭窄の程度によっては、IABPは冠状動脈の血流量を維持することができないことなどが原因と考えられている。

4.2.0.1 冠状動脈の狭窄が強いと、効果を十分に出せない

IABPに対する冠状動脈の量の重要な決定要素のひとつは、冠状動脈の狭窄の程度である。

例えば、重大な狭窄(95%以上)を持つ患者の場合は、IABPによる 冠動脈血流量の改善効果が認められなかったと報告されている。

一方、PTCA後に狭窄が平均18%まで改善された後は、血流量は著しく増加したという。


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admin 平成17年3月19日