さまざまなプレッシャーが入った状況では、人間はミスをする確率が上がります。 これに対する対応策として、従来の医療事故防止マニュアルなどでは、以下のようなコメントが書かれます。
本当に、こんなもので十分でしょうか。"気を付けよう"と号令をかけるだけなら簡単です。 ですが、"気を引き締めろ""注意しろ" といった標語の連発だけでミスが減らせるなら、日本の医療過誤は、とっくに無くなっています。
JASは、チームの力でミスを防ぐ、具体的な方法を提唱しており、これをCRMと称して詳しい内容を公開していますが、 そこでは大体、以下のようなことがかかれています3.1。
CRM(JASの提唱する安全対策)では副操縦士のような情報源をリソースと呼び、 利用可能なリソースを手がかりにして状況判断をすることを「リソースの活用」として定めています。
リソースを活用することの出発点は「もしかしたら自分は間違っているかもしれない」と考えることなのです。
状況を判断する際に、出来るだけそのことを口に出し、一歩立ち止まることも重要です。 それにより自分自身のみならず、まわりの者にも考える余裕を与え、間違いを指摘する時間を与えることになるからです。
そのような、ほかのメンバーの指摘に対して、素直に受け入れることも必要です。 「自分は絶対に間違えない」と思っている人ほど、他人の指摘に対して素直になれないからです。
離陸中のような時間的な制約の中で、「何かがおかしい」 とアドバイスを受けたならば、 直ちに離陸を中止する事がリソースの活用の態度なのです。
この提言は非常によくまとまっており、参考になる内容が多々あるのですが、 それでも、たぶん医療過誤は減らせません。
いくら精神論で"気を付けましょう"といっても、気を付けられないからミスをするのが人間です。
ミスをしない、あるいはミスをしてもそれをカバーしてくれるシステムを作らない限り、 医療ミスを減らすことは出来ません。