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5 抗凝固について

V-V ECMOも体外循環のひとつであり、抗凝固薬の使用は必須である。従来の人工心肺回路に比べ、 テルモのキャピオックスを始めとするヘパリンコートされた回路は、抗凝固を強力に行う必要がなく便利である。

抗凝固薬の中で、よく用いられるのはヘパリンかフサンである。

5.1 ヘパリンを用いた抗凝固

以下のように用いる。APTT以外に、簡便な指標としてACTを用いる施設が多い。

抗凝固の目標値として、従来はAPTTで50〜80秒、ACTで200〜300秒が目標であったが、 ヘパリンコートされた回路ではそこまでしなくても凝血しにくくなった。

  1. 最初 60U/kg 静注 (最大量5000単位まで)
  2. 以後14U/kg/h13 で持続静注開始。
  3. 6時間後にAPTTを採血。その値を見て、表1に従い持続量を調節。
  4. 目標値はAPTTで45〜70秒。APTTを2回測定して、2回とも目標値であったならば、次の採血は翌朝でよい。


表 1: ヘパリン調節ノモグラムの例。これは体重あたりで行うもの。
ACT APTT ボーラス量 持続静注量
120秒以下 40秒以下 2000単位 2U/kg/h 増加
121〜180秒 40〜44秒 なし 1U/kg/h 増加
181〜210秒 45〜70秒 なし そのまま
211〜240秒 71〜80秒 なし 1U/kg/h 減量
241〜270秒 81〜90秒 30分中止 2U/kg/h 減量
271秒以上 90秒以上 1時間中止 3U/kg/h 減量


実際のところ、ヘパリンの量の調節はほとんどの施設でACTで行っている。 しかし、ACTはしばしば当てにならず14、1日に1回はAPTTを測定して抗凝固がちゃんと行われているのかどうか確認すべきと思う。


5.2 フサンを用いた抗凝固

フサンはヘパリンと違い、半減期が非常に短いためローディングドースがいらず、また体内の凝固環境にほとんど影響しない。 このため出血の合併症がより少なくてすむ可能性がある。

これを用いる場合は、体外循環開始と同時にメシル酸ナファモスタットを1時間あたり20 mg〜40 mgの速度で持続注入する。

具体的には5%のグルコース溶液20 mlにメシル酸ナファモスタット120 mgを溶解し、これを体外循環開始と同時に、 脱血カテーテルの側管からから3.5 ml〜6.5 ml/hの速度(通常1時間あたり5.0 ml)で持続注入する。

実際に使う場合は、V-V ECMOの返血ラインから採血し、ACTで180〜200秒前後を目標にフサンの投与量を調節する。

フサンは生食と混合すると凝固するので注意。


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admin 平成16年11月12日