next up previous contents ホームページに戻る
: 3.5 大動脈弁閉鎖不全症 : 3. 心エコーを用いた弁疾患の重症度評価 : 3.3 僧帽弁閉鎖不全   目次


3.4 大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症手術の手術適応を決定する最も大きな要因の一つは、胸痛、失神、 呼吸困難など自覚症状の有無である。

しかし、大動脈弁狭窄による症状は一度出現するとその後の進行が速く、生存率は急速に低下する。

無症状の場合でも本症は進行性の疾患であり、弁口面積は0.1〜0.3$cm^2 $/年の割合で狭小化し、 最大圧較差は10〜15mmHg/年の割合で増加する。このため、心エコーを用いた経過観察は重要である。

3.4.1 連続ドップラー法

連続波ドプラ法で計測した最大圧較差からみた重症度の目安は、50mmHg未満であれば軽症、 50〜90mmHgであれば中等症、90mmHg以上であれば重症である。

また、この血流速度をトレースして求められる平均圧較差であれば、25mmHg未満で軽症、25〜50mmHgで中等症、50mmHg以上で重症と判定される。

この圧較差は左室機能、ARの存在の有無によって影響を受ける。

このように圧較差は、狭窄弁口を通過する血流量に閲する情報が欠落しているため、 圧較差だけで正確に評価することは困難である。

実測値との比較では、心エコーで求めた最大圧較差のほうが心カテーテル検査で求めた値よりも 20-30mmHg程度大きくなる。

3.4.2 トレースによる弁口面積実測

一方、弁口面積による大動脈弁狭窄症の重症度評価は、心機能の低下や合併する大動脈弁逆流な ど他の弁膜疾患の影響を受けにくく、圧較差に比してより正確な重症度評価が可能となる。

しかし、大動脈弁の弁口面積のトレースによる実測は断面が1〜2mmずれただけで誤差(図3.6)を生じ、 正確な評価が難しい。

図 3.6: 大動脈弁狭窄のトレース

\includegraphics[width=.5\linewidth]{ava.eps}

3.4.3 連続の式による弁口面積計算

左室流出路を通過する血流量が、大動脈弁口を通過する血流量と等しいという連続の式の概念に基づいて、 機能的弁口面積を計測できる(図3.7)。

図 3.7: 連続の式による弁口面積
\includegraphics[width=.9\linewidth]{ava2.eps}

各々の流路における血流量はパルスドプラ法と断層心エコー図を用いて求めることができる。

連続の式に基づく大動脈弁口面積(AVA$cm^2 $)は、大動脈弁駆出血流速度パターンの時間積分値(AV-TVI cm)、 左室流出路断面積(LVOT$cm^2 $)および左室流出路駆出血流速度パターンの時間積分値(LVOT-TVI cm)を計測して、 次式に代入して算出できる。


\begin{displaymath}AVA=LVOT\times(LVOT\ TVI/AV\ TVI)\end{displaymath}

3.4.4 手術の適応

最大圧較差90mmHg以上、平均圧較差50mmHg以上、弁口面積0.75$cm^2 $以下の場合、大動脈弁置換術の適応がある。


next up previous contents ホームページに戻る
: 3.5 大動脈弁閉鎖不全症 : 3. 心エコーを用いた弁疾患の重症度評価 : 3.3 僧帽弁閉鎖不全   目次
admin 平成16年12月16日