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: 5 それでもマインドコントロールは必要 : 臨床研修とカルトの手法 : 3 マインドコントロール的な臨床教育の弊害   目次


4 マインドコントロールを解く方法

研修医時代に身につけた知識は、ちょうどパソコンのプログラムのようなもので、 必ず何らかの"バグ"があります。

本来は、こうした間違いは自分の力で直していく必要があるのですが、 前に述べた理由で、これを一人で行うのは難しいです。

カルトに深入りした人を社会復帰させる方法は、大きく2つあります。 以下に述べる"ディプログラミング"と呼ばれる方法と、 そこから発展した"インフォーミング"と呼ばれる方法です。

4.1 "ディプログラミング"の手法は危険

ディプログラミング、あるいは解体といわれている手法は、カルトの信者を強制的に一般社会に連れ戻し、 "君はマインドコントロールされていた""あの教祖の教えはうそだ"といったことを、 マインドコントロールと同じ手法を用いて、 信者の頭に"書き込みなおす"方法です。

この方法は、かつては主流の方法でしたが、多くの問題があります。

ディプログラマーは本人に対して、"お前は洗脳され、マインドコントロールされている"と教えます。 もしこれを本人が受け入れれば、信者は自分の人生において、 他人が下した重大な決定を受け入れざるを得ない立場に2度も追い込まれることになります。

最初は教団によって信者になることを決定され、次はディプログラマーによって、 その教団を離脱することを決定されるのです。

このことは、本人の自己否定につながります。結果、ディプログラミングを受けた人が抑うつ的になったり、 ディプログラマーに対して敵意を抱いてしまったり、といった問題を生じ、現在ではあまり行われなくなりました。

4.2 勉強することでマインドコントロールを解く

4.2.0.1 ディプログラミングの技法は改良された

もう一つの方法が、"情報の提供"とか、インフォーミングなどと呼ばれている方法です。

"マインドコントロールされたあなたは、間違っていた"という教えかたは、 本人の自己の全てをを否定してしまい、 相手に与えるショックが大きく、うまくいきません。

現在は、"そうした考え方があってもいいと思うけれど、それにこだわらなくてもいいのではないか" "世の中にはいろいろな考え方があっても良い"ということをまず教え、 その後に一般社会と、カルトのどちらがいいかは、信者に選択させるという方法がとられます。

4.2.0.2 二元論的な思考の否定がカギ

マインドコントロールの手法の特徴のひとつが、光と闇、善と悪、神とサタンと行った二元論的な教育を行い、 中間の立場を認めないことです。 こうした教育法を行うことで、組織の教義はより印象深く頭に入り、また集団の結束は深まります。

カルトから離れてきた元信者を説得する際、彼らが受けてきたマインドコントロールのすべてを否定するのではなく、 "世の中にはいろいろな立場があってもいい"という部分のみ説得し、後は自由選択に任せる、という立場をとると、 元信者は自分で情報を集めるようになり、マインドコントロールは自然に解けるといいます。

4.2.0.3 研修医をディプログラミングするのは危険

病院を移ってきた研修医も同じことです。

臨床医の教育の充実をうたっている病院で、何年か研修を受けてきた研修医が、 新しい職場に移ったとき、そこで自分の方法論が受け入れられないと、彼らは以下のような行動をとります。

いずれにしても、不幸な転帰です。

4.2.0.4 情報を否定するのでなく共有する

こうした研修医を受け入れる職場の上司が、研修医の受けてきた教育内容を頭からは否定せず、 "世の中にはいろいろな立場がああってもいい"ということを刷り込むのに成功すれば、 マインドコントロールは自然に解けます。医師の世界には、MEDLINEをはじめとする情報媒体がたくさんあります。

公平な立場で勉強を重ねられれば、自分の受けてきた教育の正しい部分、間違っていた部分は自然に見えてきます。 卒後研修の経験も、無駄にはなりません。上手くいけば、自分の脳内の"間違った条件づけ"が事故を起こす前に、 修正できるかもしれません。


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admin 平成17年3月10日