: 急性期心不全に対する、CPAPの臨床的効果
: CPAPマスクを用いた肺水腫の治療
: 実際の使い方
  目次
CPAPは常に一定の圧力を気道にかけることにより、過剰な静脈血環流を抑え、
更に心収縮時には心臓にかかる壁圧をCPAPによる陽圧でキャンセルすることにより、
アフターロードをも減らしうる。CPAPは機能的残気量を増し、閉塞した肺胞を開き、右左シャントの割合を減らし、
結果として酸素化をよくする。
図 5:
胸腔内を陽圧にすることにより、肺胞と血管との間にあった水分は、気管支側に移動する。このことで、
酸素化は飛躍的によくなる。この効果は、5cmH2O程度のCPAPでも実感できる。
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機能的残気量の増加はまた、肺のコンプライアンスを改善し、呼吸筋の仕事量を減らす。
呼吸筋の仕事量は、健常人の安静時では体全体の酸素消費量の4%程度を占めるに過ぎない。しかし、
呼吸不全状態になった患者では、この量が20%近くにも達する。図6は、安静状態のボランティアに過換気をしてもらい、
酸素消費量を計ったものだが、分時換気量が10lを超えたあたりから、酸素消費量が急速に上昇していくのが分かる。
この上昇分は、理論上は呼吸筋が消費する酸素量に等しい。
図 6:
換気量と呼吸仕事量の関係。分時換気量が10l/分を超えたあたりから、横隔膜の酸素消費量が
急速に増える。
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このため、呼吸筋仕事を減らすCPAPの効果は、心拍出量を20%増したのと、同じような効果が期待できる。
これらの理論は、
- 5cmH2OのCPAPで、PCWP12以上の心不全の患者の心拍出量が、平均2.48から2.86へと上昇した(1992年、ブラッドレイら)
- 食道内圧モニターを用いた心筋仕事量の推定から、心不全に陥った患者の心筋仕事量は、
10cmH2OのCPAPで平均11%減少し、呼吸筋仕事量は平均40%減少した(1995年、ノートンら)
とする報告などで裏づけられている。
またこれらの報告では、いずれも心拍数の減少も確認されている。これは、CPAPにより肺胞伸展受容器が刺激され、
副交感神経刺激が優位になるためと考えられている。
生化学的な因子では、心不全増悪期に上昇する物質であるノルエピネフリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、
エンドセリンについては、CPAPの負荷により、血液中の濃度が減少することが報告されている。
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平成14年8月8日