CPAPマスクは、救急外来で装着してこそ、 真価を発揮する。当院導入当初は、ERではリザーバーマスクで立ち上げ、ICUに入ってからCPAPマスクの適応を考えていた。
しかし、肺水腫を生じるような患者の場合は、胸腔内を陽圧にすることが、直接治療効果を出す。 このため、救急外来で、患者が着たらすぐにCPAPマスク療法を開始すると、その治療効果をより実感できる。
現在、当院ではCPAPマスクキットをERに1セット、ICUに1セット常備している。
呼吸困難を主訴に来院した患者で、胸部単純写真上、肺うっ血が認められた患者は、すべてCPAPマスクを試みている。 マスクがなじめない患者の場合はすぐに中止するが、何回か使用経験のある人、あるいはマスクに抵抗感のない人では、 血液ガス上pH 7.0以上あれば、気管内挿管を回避できることが多い。
よい適応と考えているのは、以下の患者である。
用いる道具は施設ごとに異なるが、ハイフローCPAPのセットが無くても、普通の呼吸器に酸素マスクをつけ、 それを患者に装着(写真3)しても同じ効果が得られる。これであれば、無呼吸アラームもつくので便利ではある。
肺水腫の患者にCPAPを用いる場合、FiO2を一定以上上げられない、BiPAPは不向きかもしれない4。
市販のハイフローCPAPを組む際には、図のように回路の途中にリザーバーバッグを組み込む5と、圧が安定する。
このセットはCPAPバルブを交換することで圧を変更できるが、当院では一律5cmH2Oで開始している。
心不全患者にCPAPマスクを用いた場合、通常は5分以内に呼吸困難感の軽減が得られる。
逆に、マスクの不快感が強く、CPAPマスクに抵抗感がある患者、5cmH2O程度のCPAP圧では血液ガスの改善が 得られない患者は、それ以上CPAPマスクにこだわらないほうがよい。
この治療法は、もともとはリザーバーマスクによる酸素投与と、気管内挿管による人工換気の、いわば隙間商品として 誕生したものであり、必要以上にこれにこだわる意味は無い。
COPD増悪の患者と違い、心不全患者は肺機能は正常であることが多く、気管内挿管を行っても、それだけで死亡率が悪化することは
ない。”非侵襲的”にこだわって6、
適切な治療を行わないほうが、患者にとってはよほど侵襲的である。