自己呼吸している患者を補助するために、マスクを使って気道陽圧を与えた記述として一番古いものは、 1912年1にさかのぼる。 この年、麻酔学者のスターリング・バンネルが、 胸部手術中に肺の膨張を維持するためにマスクを使ったことを報告している。
1936年にプルトンとオクソンらは手術室以外での初めての臨床研究を発表した。
彼らは、肺浮腫の原因は「左心室と右心室の協調運動不能により、肺循環に流れ込む血液が全身系循環に完全に流れ込まない」 ことである、という前提に基づいて「気道の圧力を上げれば、肺内部の血圧上昇を妨げることができる」と仮定した。
彼らはこの仮定に基づいて、「肺プラス圧装置」を設計し、真空掃除機を利用してガス流を起こし、CPAPマスクを作成した。
この肺プラス圧装置を心臓性喘息(肺水腫)の患者7名に用いたところ、呼吸困難の緩和に効果があった。
1937年にバラックらは、呼吸閉塞と肺浮腫の両方の治療に、持続的陽圧呼吸(CPAP)を用いたことを報告した。 彼らは、CPAPは吸気時の呼吸仕事量を軽減し、呼気中の気管支虚脱を防ぐことによって、換気の効率を向上させるとの理論を立てた。
また、ブルトンとオクソンが1936年に主張したように、マスク経由のCPAP治療で肺浮腫の症状が軽くなったのは、 「気道陽圧の上昇によって肺胞毛細管の膜に対抗力が加えられ、液体が流出して肺胞に入るのが妨げられる」ためだと主張した。
バラックらはまた、CPAPは胸腔内を陽圧にすることにより、 右心臓への静脈還流を減らすことによって肺のうっ血を少なくする、とも推論した。
1940年代初めに技術が発達し、高高度飛行時代が到来来した。バラックは航空機研究者達と共同して、 CPAPの応用を研究し続けた。顔マスクによる陽圧は高高度(40,000フィート以上) を飛行するパイロットの低酸素血症症予防に利用された。
1952年にジェンセンは、マスクCPAP療法についての「初期」研究の最後として、 肺挫傷の治療法が改良されたことを重ねて報告した。
CPAPに対する熱狂的人気は衰えてゆき、どのような種類の呼吸機能障害にも効果のある優れた療法として、 IPPV(間欠的陽圧換気)の人気が高まった。
マスクを用いたCPAP治療は、ここで一度すたれることになる。
1973年に入り、バラックが慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者27名の労作性呼吸困難を和らげるため、 CPAPマスクを用いたことを報告した。彼らは「CPAPマスクは呼気中の細気管支の虚脱を軽減し、 また身体の吸気努力を減らすことによって、換気効率を上げる」ことを報告したが、残念なことに、 この報告は医学界ではほとんど見過ごされた。
そして1985年に、ラサネンらが心不全の急性増悪にマスクでCPAPを与えると、 単なる酸素投与のみよりも血液中酸素濃度の上昇が良いことを発表し、当初の発表から50年ぶりに、 CPAPマスクは再び心不全の治療手段として、注目されるようになった。
1982年の研究でコベリらは、バイタルサインズ社の新製品である、軽量で透明なマスクには、 空気でふくらます方式の顔密閉用シールが付いていて、マスクが原因の合併症が事実上ないことを発見した。
マスクCPAPに使用するマスクは、分泌物や嘔吐物が口腔気道にないかどうかを目で監視できるように、 透明で、軽量で、しなやかで調節できる密閉用シールか付いているべきである。
各種CPAPマスクは、標準的な麻酔用の4本のヘッドストラップを使って簡単に装着できる。 どの研究者も認めている重要な事実として、効果的に密閉するために、きつく密閉する必要性はない、ということが挙げられる。 必要な圧力がシステム内で維持される限り、マスクまわりの空気漏れは許容できる。