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: その他の話題 : ST上昇だけで解釈する心電図 : 冠血管が詰まるとSTは上昇する   目次


症例

前壁中隔〜側壁梗塞の合併例

図 15: 前壁中隔梗塞の12誘導
\includegraphics [width=.8\linewidth]{anteroseptal1.eps}

発症1時間ほどたった、胸痛症例の心電図。12誘導(図15)でV1〜V4のST上昇があり、前壁の急性心筋梗塞の診断は明らかである。

図 16: 24誘導心電図
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{anteroseptal124.eps}

この心電図を、さらに24誘導に展開すると、-I I 、-aVFからaVLまでST上昇があり、前壁から側壁にかけての 大きな心筋梗塞であることが分かる。

血管造影を行うと、左前下降枝の根元に近い部分の梗塞であった。

前壁中隔梗塞

図 17: 前壁中隔梗塞の12誘導
\includegraphics [width=.8\linewidth]{anteroseptal2.eps}

12誘導でV1〜V6までのST上昇があり前壁中隔梗塞に典型的な心電図(図17)。

図 18: 24誘導では心尖部のST上昇も見られる
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{anteroseptal224.eps}

24誘導でもaVL、I 、-aVRのST上昇が見られ、前壁中隔梗塞に加えて、 心尖部の梗塞も合併していることが分かる。

比較的大きな、左前下降枝の閉塞であろう。

下壁〜後壁の梗塞

図 19: 下壁梗塞の12誘導
\includegraphics [width=.8\linewidth]{inf1.eps}

I I 、I I I 、aVFのST上昇があり、典型的な下壁梗塞の心電図である。 しかし、同時にV1〜からV3までのST低下が生じている。

図 20: 下壁梗塞の24誘導
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{inf124.eps}

24誘導(図20)にすると、-V3〜-V1でSTが上昇。下壁梗塞に加えて、左室後壁にも梗塞が及んでいることが分かる。

右冠動脈の大きな人が心筋梗塞になると、こうした心電図変化を生じる。

側壁梗塞

図 21: 一見正常な12誘導
\includegraphics [width=.8\linewidth]{high_lateral.eps}

胸痛を訴えている患者の12誘導(図21)は、一見すると正常にも見える。

しかしよく見ると、I I 、I I I 、aVFでSTが低下、I 、aVLでST上昇が生じている。

図 22: 側壁の誘導でST上昇が見られる
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{high_lateral24.eps}

24誘導に展開すると、-aVF、-I I I 、aVL、I のST上昇があり、 側壁に限局した心筋梗塞であることが分かる。

左の対角枝の心筋梗塞である。

後壁梗塞

図 23: 心電図はST低下のみ
\includegraphics [width=.8\linewidth]{posterior.eps}

12誘導心電図は、一見するとST低下のみ見られる。普段は”狭心症”と診断される事が多い心電図である。 しかし、狭心症の心電図はV5〜V6あたりにST低下を生じる事が多く、V1〜V3あたりのST低下は比較的珍しい。

図 24: 後壁の心筋梗塞
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{posterior24.eps}

これを24誘導に展開すると、-V3〜-V1、V6にST上昇を生じており、後壁に限局した心筋梗塞の心電図であることが分かる。

左回旋枝の心筋梗塞で、ときどきこうした所見が見られる。

後壁〜側壁梗塞の合併例

図 25: 12誘導で目に付くのは、V1〜V2のST低下、V6のST上昇である。
\includegraphics [width=.6\linewidth]{post_lat.eps}

図 26: 後壁から側壁の梗塞
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{post_lat24.eps}

24誘導で見ると、-V3〜-V1、V6にST上昇があり、さらにI 、-aVR、I I 誘導でもST上昇が確認できる。

結局、これは心尖部から後壁、側壁にかけてのけっこう大きな梗塞であり、左回旋枝の心筋梗塞のパターンである。

右室梗塞を合併した下壁梗塞の例

図 27: 12誘導は下壁梗塞
\includegraphics [width=.8\linewidth]{rvami.eps}

12誘導からは、I I 、I I I 、aVFのST上昇があり、典型的な 下壁梗塞の心電図である。

図 28: 24誘導では右室梗塞を合併
\includegraphics [width=1.0\linewidth]{rvami24.eps}

24誘導心電図になおすと、心筋梗塞の範囲は左室の下壁だけではなく、 右心室の領域にも及んでいることが分かる。

I I 、I I I 、aVFだけではなく、 -aVL、-I 、V1、-V6にもST上昇が見られる。

右室梗塞は、伝統的にはV3R、V4R4のST上昇で診断するが、 特別な誘導をとらなくても診断は可能である。

心膜炎

図 29: 全誘導でのST上昇
\includegraphics[width=.8\linewidth]{pericard.eps}

発熱と、前胸部の痛みで来院した患者。12誘導では、心電図の全誘導でSTの上昇が見られる。心膜炎の心電図である。

図 30: 心外膜炎の心電図
\includegraphics[width=1.0\linewidth]{pericarditis24.eps}

24誘導にしても、心臓表面の、全周にわたってST上昇が確認され、 同様の所見であることが分かる。


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Administrator@WORKGROUP 平成14年8月13日