: まとめ
: ST上昇だけで解釈する心電図
: 症例
  目次
心筋梗塞の心電図を読む上で、知っておくと便利なこと。
普段12誘導心電図を読んでいるかぎりは、aVR誘導に注目することはほとんど無い。
”無くてもいいんじゃないか”、という意見もあるが、この誘導は心尖部の心筋の情報を与えてくれる。
同じような方向を見るのはV6誘導であるが、V6誘導と、-aVR誘導は大体同じように変化する。
心筋梗塞患者について、来院時の心電図上、aVR誘導のST部分が低下していると、予後が悪いという報告がある。
これについては、今まで見てきたとおり、aVR誘導のST低下は、すなわち心尖部部分のST上昇を見ているのに他ならない。
前壁梗塞であれ、下壁梗塞であれ、心尖部にまで梗塞が及んでいる症例は梗塞範囲が大きく、予後が悪い。
一方、来院時心電図でaVR誘導のST部分が上昇している症例は、有意に左冠動脈主幹部の梗塞が多い、という報告もある。
この理由はよく分からないが、前壁と後壁に同時にST上昇を生じた場合、下壁から心尖部にかけてはSTの低下を生じるためだろうか。
心筋梗塞の梗塞範囲の大小とは別に、心筋梗塞患者に左脚前枝ブロックを合併すると、予後が悪い、という報告がある。
通常の心臓は、上から下、右から左に興奮するが、左脚前枝が何らかの理由で切断されていると、興奮の方向が下から上に
変わり、極端な左軸偏位になる。
図 31:
正常な刺激伝導系では、心臓は上から下に興奮する。左脚前枝(図の
の部分)が
切断されると、その部分の興奮が遅れ、心臓の興奮軸が上を向く。(3本の線維は、左から右脚、左脚後枝、左脚前枝)
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救急外来で心電図をとる際には、気を付けたほうがいいかもしれない。
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平成14年8月13日