ショックになっていない人間の場合、細胞表面のレセプターにノルエピネフリンやアンギオテンシンなどの血管収縮物質が
付着すると、細胞外液からCaが流入し、これが引き金となって血管が収縮する [#!Sepsis:1!#]。
一方、細胞表面にNOやANPなどの血管拡張物質が付着すると、cGMPの作用を介して血管を拡張する(図3.2)
ところが、何らかの原因でショックが遷延し、組織の低酸素が進行すると細胞内に乳酸が蓄積する。 乳酸はATP依存性のKチャネルを開いてしまい、この結果細胞の膜電位が強い陽性になるため、カテコラミンの刺激があっても Caの流入を生じることが出来なくなる(図3.3)
結果として、血管拡張性ショックの患者はNOによる血管拡張の働きのみが残ることになり、カテコラミン不応性の ショック状態が完成する。
こうした患者に対して、近年バソプレシンの静注が試みられ、効果を上げている [#!Sepsis:6!#]。 バソプレシンは利尿に関与しているホルモンであるが、本来は血圧が低下すると血液中濃度は上昇する。 ところが、カテコラミン抵抗性ショックの患者では、しばしば血液中のバソプレシン濃度が上昇していなかったり、 あるいは減少していることが観察されている。
カテコラミン不応性のショックの患者に対して、極少量(生理学的に分泌されている量と同じ程度)のバソプレシンを 外から静注すると、血圧が著明に上昇することがある。
この機序としては、以下のようなものが考えられている。
まだ症例報告の積み重ね以上のデータは出ていない3.1が、敗血症性ショックをはじめとするさまざまな難治性ショックの 症例で、バソプレシンの有効性が報告されつつある [#!Sepsis:6!#]。