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3.1 early goal-directed therapy

敗血症の患者では、組織の低酸素血症から多臓器不全が進行し、結果として死に至る。 敗血症発症初期の組織低酸素血症は、血圧、脈拍といったバイタルサインから推定することは難しかった。

このためより明確な治療の目標として、肺動脈カテーテルが積極的に使用された時期があった。 敗血症患者に肺動脈カテーテルを挿入し、患者の心拍出量を測定することで、 末梢組織への酸素供給量を正常化、あるいは正常以上にするよう、カテコラミンの量や輸液量の調節を行う 治療方針が試みられてきた。

こうした治療方針をgoal-directed therapy と呼ぶが、この方法は従来どおりの治療方針に比べてカテコラミンや 輸液の量は増加したものの、予後の改善効果を証明することはできなかった。

goal-directed therapy がどうして効果がなかったのかは明確には分かっていないが、その理由の一つとして、 血行動態の正常化を開始する時間が遅すぎたのではないかという説がある。 さらに近年になり、心拍出量よりもより確実な組織低酸素血症の指標として混合静脈酸素飽和度が注目されるようになった。

3.1.0.1 EARLY GOAL-DIRECTED THERAPY IN THE TREATMENT OF SEVERE SEPSIS AND SEPTIC SHOCK [#!Sepsis:10!#]

3.1.0.1.1 対象患者

重症敗血症、敗血症性ショックで救急外来に運ばれた患者263名

3.1.0.1.2 方法

外来に来院した患者のうち133人は、従来どおりの敗血症治療を受けた。 残り130人については、救急外来でCVラインを挿入され、そこから得られた血液の酸素飽和度(ScvO2)が測定された。

治療群の患者はこのScvO2の値が70%以上になるよう、プロトコール(図3.1)に従い救急外来で治療を受け、 その後入院となった。

図 3.1: EARLY GOAL-DIRECTED THERAPYのプロトコール。患者はScvO2が70%以上になるよう、輸血やカテコラミンによる治療を 救急外来で受け、こうした値が正常化してから入院する。
\includegraphics[width=.55\linewidth]{goal_direct_protcol.eps}

3.1.0.1.3 結果

患者の総死亡率は、従来の治療群で46.5%、EARLY GOAL-DIRECTED THERAPY群で30.5%と改善した。

患者の入院後、最初の6時間で用いられた輸液、カテコラミンの量はGOAL-DIRECTED THERAPY群で有意に多かったが、 その後7から72時間目までは従来の治療群のほうがこうした治療薬の量が増加した。

入院期間全てにわたってみると、量治療群に用いられた治療薬や輸血、輸液の総使用量は変わらなかった。


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admin 平成16年11月12日