このためより明確な治療の目標として、肺動脈カテーテルが積極的に使用された時期があった。 敗血症患者に肺動脈カテーテルを挿入し、患者の心拍出量を測定することで、 末梢組織への酸素供給量を正常化、あるいは正常以上にするよう、カテコラミンの量や輸液量の調節を行う 治療方針が試みられてきた。
こうした治療方針をgoal-directed therapy と呼ぶが、この方法は従来どおりの治療方針に比べてカテコラミンや 輸液の量は増加したものの、予後の改善効果を証明することはできなかった。
goal-directed therapy がどうして効果がなかったのかは明確には分かっていないが、その理由の一つとして、 血行動態の正常化を開始する時間が遅すぎたのではないかという説がある。 さらに近年になり、心拍出量よりもより確実な組織低酸素血症の指標として混合静脈酸素飽和度が注目されるようになった。
治療群の患者はこのScvO2の値が70%以上になるよう、プロトコール(図3.1)に従い救急外来で治療を受け、 その後入院となった。
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患者の入院後、最初の6時間で用いられた輸液、カテコラミンの量はGOAL-DIRECTED THERAPY群で有意に多かったが、 その後7から72時間目までは従来の治療群のほうがこうした治療薬の量が増加した。
入院期間全てにわたってみると、量治療群に用いられた治療薬や輸血、輸液の総使用量は変わらなかった。