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2.5 "生理的な"量のステロイド

炎症を抑える物質の代表はステロイドである。従来から敗血症の患者に対してステロイドの効果が試されてきたが、 高用量のステロイドを敗血症の患者に用いる試みは、ことごとく失敗に終わった。

こうした結果に対する反省から、近年になりより少量のステロイドを敗血症患者に用いる試みがなされ、 生命予後の改善効果が報告されるようになった [#!Sepsis:3!#]。

2.5.0.1 敗血症とステロイド

敗血症の患者で、特に治療抵抗性のショックの患者においては副腎不全に陥っている人が多い(50〜75%)。 こうした患者では、コルチコステロイドの絶対量が不足しているだけではなく、 末梢でのステロイドの効果が減弱することも知られている。

この理由として、以下のようなものが考えられている。

敗血症性ショックの患者に中等量のステロイドを補充すると、カテコラミンの効果が回復する。 このときに用いる程度のステロイドの量では全身の炎症の程度には大きく影響しないため、 少量ステロイドの敗血症に対する効果が試されることになった [#!Sepsis:14!#]。

2.5.0.2 Effect of a treatment with low doses of hydrocortisone and fludrocortisone on mortality in patients with septic shock.

2.5.0.2.1 対象患者

人工呼吸器を装着された敗血症性ショックの患者300名。

2.5.0.2.2 方法

患者はあらかじめ迅速ACTH試験を受け、ACTHに対する反応があった群と無かった群とに分けられた。

それぞれの患者群で、さらにプラセボとハイドロコーチゾン(50mgを1日4回)、フルドロコーチゾン(50$ \mu $g 1日1回)とを 7日間静注し、ステロイドによる予後の改善効果を調べた。

2.5.0.2.3 結果

敗血症性ショック患者300人中、229人でACTH静注に対する反応が得られなかった。

ACTHに対する反応が無かった群での死亡者は、プラセボ群で73人、ステロイド群で60人と有意に33%の予後の改善を得た。

一方ACTHに対する反応があった群ではステロイドの予後改善効果はなく、むしろ死亡率が高い傾向があったが 統計的有意差は無かった。


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admin 平成16年11月12日