様々な病気が、分泌物の排出に異常を生じる。
それらの異常は気道の開存性の異常、粘液分泌や線毛運動の異常、そして咳の障害とに分けられる。
正常な痰の排出は、開いている気道があって初めて正常に行なわれる。呼吸するときの気道の閉塞は、 気道分泌物の貯留を促してしまう。
神経筋疾患や、脊椎側弯症などの種々の胸郭変形性疾患では気道が圧迫され、分泌物の排出が障害される。
内因性の気道閉塞は、分泌物の過剰や気管支のれん縮により生じ、これらを生じる病気に喘息や肺気腫、肺炎がある。 また気管支拡張症や嚢胞性線維症といった病気、そして慢性の喫煙歴などにより、粘膜エスカレーターの障害が生じる。
効果的な咳は、もう一つの大切な分泌物排泄機構である。吸気は上気道がしっかり開いていないと行なえず、 また圧縮期を効率良く行なうには、喉頭の運動が正常に行なわれなくてはいけない。胸部外傷や手術後などといった、 効果的な咳ができないような状況では、たとえ粘膜エスカレーターの機能が保たれていたとしても、粘液栓による気道の閉塞や、 無気肺を生じうる。
また神経筋疾患、筋ジストロフィー、脊髄損傷後の患者などもやはり効果的な咳ができない。 更に、気管切開を受けている患者や挿管中の患者は喉頭の運動が制限されているため、自力で咳をすることはできない。